出版社内容情報
韓国・ソウルの中京高校にある歴史探究サークルの学生たちが、ハラボジ(おじいさん)・ハルモニ(おばあさん)へのインタビューを通じて、戦争の被害や実態を探る。また、日本を訪れ日本の高校生とも交流し、お互いの考えの違いを知り、理解し合おうとする。
本を出すにあたって
この本を読む前に
第1部 戦場からの生還
第1章 最前線挺身隊――李熙白[イヒベク]ハラボジ
第2章 戦犯ならぬ戦犯――呉幸錫[オヘンソク]ハラボジ
第3章 私の戦争は終わっていない――姜富中[カンブジュン]ハラボジ
第4章 沖縄と〈恨(ハン)の碑〉――姜仁昌[カンインチャン]ハラボジ
第5章 戦争の傷――鄭尚華[チョンサンファ]・李相協[イサンヒョプ]ハラボジ
第6章 戦場 セブにて――金正国[キムジョングク]ハラボジ
第2部 私の父母、私の夫
第1章 父を返して――李熙子[イヒジャ]さん
第2章 私の父、そして母――朴進夫[パクチンブ]さん
第3章 忍冬草(スイカズラ)の生――柳福禮[ユポンネ]ハルモニ
第3部 ゆがめられた人生の肖像
第1章 片足人生五十年――池和福[チファボク]ハラボジ
第2章 闘士ハルモニ――黄錦周[ファンクムジュ]
第3章 純潔な女性――朴玉連[パクオンニョン]ハルモニ
第4章 咲くことができなかった蕾(つぼみ)――李玉善[イオクソン]ハルモニ
第4部 過去をふまえ未来に向かって
第1章 朱鞠内(しゅまりない)での経験
第2章 朱鞠内見学を終えて――日本の友人からの返事
第3章 日本での七日間
第4章 苦しみの中に咲く希望
第5章 私は日本に住んでいる韓国人です。
本をまとめながら
本の出版をお祝いします――保護者、教師、友人からのメッセージ
解説
読者の皆さんへ
本を出すにあたって
“セーラームーン、となりのトトロ、もののけ姫、ドラゴンボールから広末涼子、浜崎あゆみ、宇多田ヒカル”まで、どれもみな決してなじみの薄い言葉ではない。
今、わが国(韓国)では日本文化の開放で日本文化から日本という国そのものにいたるまで、容易に接することができるようになった。日本で韓国の映画・音楽・食べ物などが大変人気を得ているように、わが国でも日本のものが大変注目をあびている。
二〇〇二年、韓国と日本はワールドカップサッカーという地球村の祭典の主人公だった。これは、お互いの存在を身近に感じる契機となった。韓日両国の友好関係を築くにあたり、最も大きな役割を果たしたと言える。
そしてその後に続く日本文化の開放。これらのことは、日本に対する漠然とした神秘感や嫌悪感にとりつかれていた人々に、新しい示唆を投げかけたと言えるだろう。
ほんの何年か前までだけを見ても、韓日関係は非常に冷え込んでいて、お互いに近づきがたい存在だった。
ずっと昔の壬辰倭乱(イムジンウェラン)〔一五九二年、豊臣秀吉による朝鮮侵略のこと。日本では文禄の役という〕から太平洋戦争までのいろいろなことで、私たちが日本によくない感情を持っているのは事実だ。このような韓日間の敏感な問題は、小泉総理の靖国神社参拝や歴史教科書歪曲問題などでよりふくれあがり、最近では歪曲された歴史教科書が再び出版されるなど、あきれるようなことが続き、二つの国の感情のもつれは頂点に達した。
私たちは、この本に太平洋戦争の犠牲者である「慰安婦」・強制徴用・徴兵された人々と、その犠牲者の遺族の話をまとめた。
太平洋戦争の犠牲者に関する話が世の中に出てくるのに、おおよそ五十年という時間がかかった。そして、その長い時間は日帝〔日本帝国主義〕の徴用に抗せず戦場に引っ張られて行った十七~十八歳の少年少女たちを、いつの間にか白髪の老人に仕立てあげるに十分だった。
彼らは残酷な戦争を身をもって体験し、二度と家族のもとに帰って来られなかったり、帰って来られてもその身は満身創痍だった。時は流れ、私たちに戦争の悲劇を証言してくださるハラボジ・ハルモニ〔おじいさん・おばあさん〕は、もう何人もいらっしゃらなくなった。
私たちは、その方たちにお会いして話を聞き、そのとても胸の痛む話を伝え残すため、最大限の努力をした。
過去を正しい視点で分析し、今後めざすべきことを提示してくれる点で、正しい歴史認識は重要な意味を持っている。ところが、これらのことが歪曲され踏みにじられたならば、それは正しい目標を失ったも同然だ。
現在、私たちは社会・経済的統合が切実な問題となっている国際社会の中で、より効果的、より能率的に生き残るために、過去の清算問題を後回しにしようととする傾向がある。本を出すにあたって政府は政府で日本の目の色をうかがうことに汲々としているし、私たちの隣人もハラボジ・ハルモニたちの不幸を知ってか知らぬか目をそむけてきた。私たちは、これが否定的な方向に向かう近道だということを、よく知っている。
短期的に見た場合、過去の清算問題にふたをすることが、経済発展に寄与するかのように見えることもある。だが、わたしたちは知っている。基礎がまともでない発展は、より大きな問題点を抱えて崩壊することを。
だから、私たちは過去の清算問題を一日も早く解決しなければならないし、これを韓日両国の友好関係の発展につなげなければならない。たとえ時間が長くかかるとしても、いつかは越えなければならないことなのだから、はっきりさせておく必要がある、というのが私たちの考えだ。
文化的・社会的な過ちを見極める時、“相手が先に態度を変えないとわれわれも変えない”という考えは間違っている。共同研究と協議、または仲裁を通して徐々に和解の方向を模索すべきだろう。
この本は、多くの人々の汗と苦労でできあがった本だ。
私たちは、はじめ単なるボランティアのつもりでサークル活動を始めたところ、私たちが出会った方々は、私たちのすぐ隣に住む人々だった。
そして、その方たちの胸の痛みを、単にワークブックや奉仕活動の確認書に記入する程度で終わりにするのは、何か物足りない気がした。
先生に無理をお願いしながらこの活動を続ける中で、私たちに不足している点がいかに多いかを発見した。そういう中で、大学に行って歴史を勉強する先輩や友だちも出てきた。
だから、私たちの精一杯の気持ちが、読者のみなさんにうまく伝われば嬉しいし、せめてこの本を読んでくださるみなさんには、もうこれ以上ハルモニたちの訴えや日本の謝罪を求めるさまざまな声に無関心にならず歴史をただすことに関心を持ってほしいと思う。
私たちの願いに背を向けることなく応援してくださった両親、校長先生をはじめ多くの先生方、特に出版に力を貸してくださった歴史(ヨクサ)ネットの編集部のみなさんに、心からの感謝を申しあげる。
痛みと苦しみを私たち子孫に残さないようにと努力されている方々を記憶し、精神的苦痛を抱えたまま、すでにこの世を去られた犠牲者の魂に敬意をささげる。
最後に、韓日両国民がサッカーの韓日戦などで常に持ち続けてきた目に見えない神経戦が、真の親善に変わるその日を期待する。
二〇〇三年七月
ソウル 漢江(ハンガン)のほとりで
韓国・中京高校歴史探究サークル 筆者一同
目次
第1部 戦場からの生還(最前線挺身隊―李煕白ハラボジ;戦犯ならぬ戦犯―呉幸錫ハラボジ ほか)
第2部 私の父母、私の夫(父を返して―李煕子さん;私の父、そして母―朴進夫さん ほか)
第3部 ゆがめられた人生の肖像(片足人生五十年―池和福ハラボジ;闘士ハルモニ―黄錦周 ほか)
第4部 過去をふまえ未来に向かって(朱鞠内での経験;朱鞠内見学を終えて―日本の友人からの返事 ほか)
著者等紹介
卞記子[ピョンキジャ]
韓国の児童書の翻訳にたずさわる
坪川宏子[ツボカワヒロコ]
日中韓3国共通歴史教材委員会委員。「慰安婦」問題支援ネットワーク会員
赤池すなお[アカイケスナオ]
韓国語の翻訳、通訳、執筆にたずさわる
金孝珍[キムヒョジン]
96年来日。語学書の監修や、韓国語講師として語学教育にたずさわるほか、翻訳業にも従事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。