生物多様性の保護か、生命の収奪か―グローバリズムと知的財産権

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  • サイズ B6判/ページ数 186p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750322346
  • NDC分類 507.2
  • Cコード C0036

出版社内容情報

農民が伝統的な手仕事と共同作業による交配をくり返すなかでつくりだしてきた多様な種という共有財産を、グローバル企業が世界戦略・市場支配の原理から囲い込み、知的所有権を主張することに正義はあるのか。エコフェミニズムの理論家がグローバル企業に挑む。

序 章 特許――倫理の危機
第1章 歴史的にみた特許の役割
 征服の道具としての特許
 発明の報酬としての特許
 技術移転、追いつき、輸入独占の手段としての特許
 特許とグローバル経済の支配
第2章 特許の神話
 創造性を刺激するという神話
 技術移転、イノベーション、研究開発の神話
 知識を生み出すという神話
 スパイ、犯罪、知的財産権について
第3章 生物多様性への脅威
 共有地の囲い込み
第4章 バイオパイラシー
 バイオパイラシーとはなにか
 貧しい人びとの医薬品を盗む
 農民の農場から盗む
 天然の農薬を盗む
 バイオパイラシーを解決する
第5章 種子は所有できるのか
 種子――究極の贈り物
 種子法
 植物に対する特許
 種子に対する特許――発芽を終わらせる
第6章 病気から暴利を貪る
第7章 民主制か独裁制か
 TRIPs協定
 TRIPs協定と植物特許
 TRIPs協定と生物多様性
 TRIPs協定とインドの特許法
第8章 今後に向けて
 TRIPs協定の改定と見直し
 共同体の権利としての農民の権利――特別な制度
 インドにおける知的財産権改革
 結 論
付録 インドの特許法
 独立後のインドにおける特許論争
 一九七〇年のインド特許法
訳者あとがき
参考文献
索 引

訳者あとがき
 知的財産権や特許などという言葉を聞くと、企業や専門家の専権事項で、わたしたち一般の人間の日常生活にはあまり関係のない事柄だと思いがちである。しかし本書を一読すれば、知的財産権や特許はわたしたちが生きていく上で最も必要な食料や医薬品と密接に関わっており、すべての人の生存を左右するほどの大きな問題であることがわかる。著者のヴァンダナ・シヴァは国際貿易機関(WTO)の推進する特許戦略によって、わたしたちの暮らしが破壊されつつあるだけでなく、生態系の破壊や倫理と文化の衰退も進行しつつある実態をわかりやすく提示してくれる。
 シヴァの主張に説得力があるのは、彼女が国際的にもよく知られた優れた思想家であるからだけでなく、一九九一年以来インドでナヴァダーニャ運動を続けてきたアクティビストでもあるからだ。シヴァは国際グローバリゼーション・フォーラムのリーダーのひとりでもある。
 ナヴァダーニャ運動というのは、シヴァが母親から相続した土地を売却して、その資金で故郷のデーラドゥーンに、長年にわたってインドの農民が大切にしてきた種子の保存運動を行うために、事務所を開設したのが始まりである。これは農家による種子の自家採取、有機農業の実践、農民同士の交流を促進するための運動で、企業主導のグローバリゼーションとは異なる、いわば、もう一つの、オルターナティブなグローバリゼーションを目指すものである。マハトマ・ガンジーがイギリスの塩税法に反対して自分たちの手で塩をつくろうとした運動、ソルト・サティアグラハ(塩の行進)を行ったのに倣って、シヴァはこの運動をビジヤ・サティアグラハ(種子の行進)とも呼んでいる。この活動を通してこれまでにインド国内の二〇万戸の農家が化学物質の使用を止め、二〇〇〇の農村が自家採取を行い、種苗会社の侵入を防いで、地域社会の伝統的な農業を守っていくための運動に取り組んでいると言われている。
 ヴァンダナ・シヴァの著書としてはこれまでに『緑の革命とその暴力』(浜谷喜美子訳、日本経済評論社)、『生きる歓び』(熊崎実訳、築地書館)、『生物多様性の危機』(戸田清・鶴田由紀訳、明石書店)などが翻訳されている。

 本書は二〇〇一年に刊行された。そのため、本書には二〇〇〇年以前の状況しか取り扱われていない。その後今日までの間に、経済のグローバル化はいっそう進み、知的財産権を取り巻く国際情勢にも変化が見られる。そこで、ここでは、知的財産権に関係のある事柄にしぼって若干の補足をしておきたい。
 まず、インドを含め世界のすべての国に影響を及ぼす大きな出来事が二つあった。一つは二〇〇一年九月にニューヨークで起こった9・11事件である。事件直後は世界各地でテロ批判の大合唱が起こったが、その後国連の決議も経ずに、アメリカが圧倒的な軍事力を行使して、大義のないイラク侵略に踏み切ったことで、欧米の大国主義の傲慢さと暴力を批判する戦争反対の市民運動がこれまでにない壮大な規模でグローバルに起こった。
 もう一つは二〇〇一年から毎年一月にブラジルのポルトアレグレで開催されることになった世界社会フォーラムの誕生である(二〇〇四年はインドのムンバイが開催地となった)。世界社会フォーラムは新自由主義と世界経済フォーラム(一九七一年以降、毎年一月に先進国の政界・財界の代表者を集めてスイスのダボスで開催されている会議)に反対する、各国のさまざまな地域で行われていた運動が、グローバルに連帯して生まれた運動である。企業と資本の利益を守るのではなく、地球と人を守るために、持続可能で公正な経済システムをつくろうとする世界各地の何万人もの普通の市民、とくに途上国の市民やグループの熱い思いが結集したのである。世界経済フォーラムが利潤の極大化を目指す資本の活動が世界規模に広がることを求める企業グローバリゼーションであるのに対して、世界社会フォーラムは人間が主体となる連帯のグローバリゼーションだと言うことができよう。
 二つの出来事はWTOの閣僚会議に直接的な影響をもたらした。すでに一九九九年にシアトルで行われた第三回WTO閣僚会議で、先進国と途上国との間で意見が対立し、決裂状態で会議を終了していたが、WTOの失敗をいっそう強く印象づけたのは二〇〇三年にメキシコのカンクンで行われた第五回閣僚会議であった。
 二〇〇一年一一月にカタールのドーハで行われた第四回閣僚会議は、9・11の直後であったため、テロとの戦いを世界中が支持し、貿易の自由化こそがテロを根絶するのだと主張するアメリカの宣伝に真正面から反対できない雰囲気が会議を支配していた。そのため、途上国の要求も控えめであった。それでも、ドーハ会議は最終的に、「TRIPs協定が国内の健康を守るためにとる対策の妨げになることはないし、してはならない」とする宣言を採択せざるを得なかった。この宣言により、各国政府はWTO規約に基づく経済政策などの報復措置を恐れることなく、またTRIPs協定による特許保護に縛られずに、強制実施権の行使などができるようになった。途上国の市民がジェネリック薬を安く入手できる可能性も出てきた。
 アメリカのイラク侵略後の二〇〇三年九月に行われたカンクン会議では、アメリカに対する反発も大きく、途上国の主張はより強硬となった。会議ではブラジルの呼びかけに応えて、グループ21が立ち上がり、南側の農作物と工業製品のために先進国に対して市場開放を要求した。しかし先進国側がその要求を拒否しため、会議は決裂。企業のために市場を開発しようとした先進諸国の目論見は頓挫することになった。それはイマニュエル・ウォーラーステインにカンクンで新自由主義は死に、WTOは意味のない組織になった、カンクン会議はある時代の終わりを告げる出来事だったと言わせる結果となった。
 ウォーラーステインの予測は権力も資本も持たない普通の市民を勇気づけるものであったが、現実には依然としてWTOやIMFなどの国際機関が大きな権限を持っている。本書で述べられているように、シヴァは、TRIPs協定が多国籍企業と先進諸国の大企業に独占権を与えることによって途上国の貧しい人びとから食料生産や医療の手段を奪うとして、TRIPs協定の修正と、インドの一九七〇年特許法の維持を一貫して主張してきたのであるが、人びとの期待に反して、インド政府は国内法を変えて、TRIPs協定を遵守する道を選ぼうとしている。
 とくに、インド政府が導入を決めたのが、スマトラ沖で発生した津波が襲った二〇〇四年一二月二六日であったことから「津波法」と呼ばれている二〇〇五年特許法(二〇〇五年三月二二日に議会で可決され、四月五日に法令化された)は、これまでの政策を一八〇度変えて、欧米の製薬会社が製造する医薬品の特許権を保証することにしている。それは医薬品の製造・販売を先進諸国の大企業の手にゆだねることであり、インドのジェネリック製薬会社が安いジェネリック薬を製造できなくなることを意味する。この法令の実施を止めさせるために、シヴァたちは最近ジョイント・アクション・コミッティを結成したと伝えられる。
 多国籍企業のモンサント社が種子を独占した結果、インドでは毎年数千人の農民が自殺しているという。そのうえ医薬品までもが多国籍企業の手に握られれば、最終的にはインド国家の主権と民主主義が破壊されることになるとシヴァは警告している。そうなると、追いつめられた人びとは自殺するか、テロや過激な行動に訴えざるを得なくなるだろうと憂慮している。なぜなら、テロは経済的な不公正と反民主政治が生んだ落とし子とも言えるからだ。そうであれば、テロをなくす唯一の解決法は、シヴァが言うように、武力と脅しで押さえつけることではなく、暮らし、文化、資源への権利、民主的な社会制度を守ることによって、人びとの自由と安全を高めることしかないのではないだろうか。
 本書でシヴァは主としてインドに焦点を当てているが、インドで起こっていることは決して途上国だけの問題ではなく、日本で生活するわたしたちにも深く関わってくる。なぜなら、新自由主義という経済システムはグローバルなシステムであり、どこに住んでいてもわたしたちはそのシステムから自由ではないからだ。自由化と民営化が弱肉強食の世界をつくりださないために、富んだ人と貧しい人との格差をこれ以上広げないために、そして地球の生態系を完全に破壊してしまわないためにも、シヴァの問題提起は重要である。
 折しも、わたしたちの国では郵政民営化だけを争点とした衆議院議員選挙が行われようとしている。小泉政権は民営化の必要性を強調するが、民営化の真の目的がアメリカの金融業界の要請に応えるためであるとしたら、わたしたちはインドの農民と同じ運命に見舞われることになる。
 訳語について一つだけお断りしておきたい。著者は本書でindigenousという語を頻繁に使用している。普通は「先住民」と訳される語であるが、シヴァはその地域に長年にわたって居住し、現在も伝統的な農業を行っている人びとのことを表すためにこの語を使っているので、本書ではやむなく「原住民」という訳語を当てている。
 最後に、本書は一般読者向けに書かれているため、わかりやすい訳を心がけたが、特許やTRIPs協定などで使われている経済用語には定訳とされる用語も多い。

二〇〇五年八月 衆議院議員選挙を間近にして
奥田 暁子

目次

序章 特許―倫理の危機
第1章 歴史的にみた特許の役割
第2章 特許の神話
第3章 生物多様性への脅威
第4章 バイオパイラシー
第5章 種子は所有できるのか
第6章 病気から暴利を貪る
第7章 民主制か独裁制か
第8章 今後に向けて
付録 インドの特許法

著者等紹介

奥田暁子[オクダアキコ]
大妻女子大学、恵泉女学園大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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taming_sfc

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ヴァンダナ・シヴァによる2005年の訳著。生物多様性に関する問題に関して、とくに西欧社会によってグローバル化された特許が、途上国に対してどのような甚大な影響をもたらすか、と言う点に絞っていくつかの論考が所収されている。特許とはそもそもいかなる文脈で誕生したのか、生物多様性は私的な知なのか、共有知なのか、そもそも生物資源・遺伝子資源は商品足りうるのか。現状をバイオパイラシーと把握する女史による渾身の批判の書であり、特にグローバル化推進論者の新自由主義者に一読を希望する一冊である。2011/04/15

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