出版社内容情報
本書は、従来の高校教育に関する固定観念を越え、困難な情況の中で生徒を引き付け、生徒と教師の関係を築き直している生物、化学、物理、地学の授業に関する斬新な実践例を収録。理科のおもしろさを追求したユニークな実践ノートも多数収録。
[巻頭言]教えと学びの交響する教室へ(竹内 常一)
はじめに──本物の科学教育が人間の尊厳を守る(川勝 博)
第1部 未知への挑戦──意欲と科学観の解放(奥村 弘二)
第2部 友だちがスゴイ! 私も科学者!(原 弘良)
第3部 地域の力で授業が変わる(成島 有史)
[解説]この授業実践の価値と読みどころ(川勝 博)
《巻末資料1》 授業ノートをつくろう──1976年「理科ノート7号」巻頭言より(川勝 博)
《巻末資料2》 高校教育入門・理論と実践──学力保障と人格発達を統合する高校教育(原 弘良)
あとがき
はじめに――本物の科学教育が人間の尊厳を守る(川勝 博)
この本を読めば、どんな生徒たちだって、なんと立派に、科学できるかがわかると思います。ここにある理科教育の実践を見ると、偽りの「教育困難」など、かすんでしまう。教育困難に見える現実のなかにこそ、むしろ本物の科学教育を求める生徒の叫びがあふれているように見えます。
さらに、ここに書かれている実践は、まさに21世紀に世界が転換しようとしている、すべての人々のための「科学リテラシーの教育」の先がけの実践にもなっています。いまユネスコで唱えられている、はるか前から、日本では、そんな授業の実践がはじまっていました。これは驚異的なことでなくて何でしょう。
だから、これらの実践を、私はいつかみなさんに紹介しなければとかねがね思い続けていました。それが今回、この本の刊行で、可能になったのを、嬉しく思っています。
そもそも「科学リテラシーの教育」とは何か。すべての人々のための理科教育とは何のためなのでしょう。
読み書きそろばんは、生活に必要な基本知識です。字が書けず読めなければ、役場に書類もだせず新聞も読めません。また簡単な加減乗除ができなければ買い物もを教えた。この活動のなかで、人間の倫理も、社会的きまりも、つくられた。つまり自然の理法を聴く営み(科学する営み)のなかで子供を育てること。それは人間の何千年らいの教育の、あたりまえの姿でした。
科学リテラシーをユネスコで主張した人々、それは女性、子供、先住民族、発展途上国の人々でした。その人たちこそが、豊かな自然を今日まで守り抜こうとしてきました。「科学リテラシーの教育」は、いままで人間としての尊厳を踏みにじられてきた人々が主張し始めた、新しい21世紀の学習権宣言でもあります。
だから「科学リテラシーの教育」で最も大切なこと。それは「誰でも科学できる」その力を持っている。だからその自信を、人権教育として、しっかり全ての生徒に教えることです。
それは、たとえば参政権と同じです。学校の成績が5の生徒は投票資格があるが、成績が1の生徒は、投票資格がない、などということはありません。参政権はだれでも民主社会では基本的人権として持っています。だから社会の主権者を育てる市民のための科学教育は、投票資格の付与の場ではなく、力の行使の訓練と確信の育成の場でなければなりません。
ところが学校ではどうでしょう。いまだ
目次
第1部 未知への挑戦―意欲と科学観の解放
第2部 友だちがスゴイ!私も科学者!
第3部 地域の力で授業が変わる
解説 この授業実践の価値と読みどころ
巻末資料1 授業ノートをつくろう―1976年「理科ノート7号」巻頭言より
巻末資料2 高校教育入門・理論と実践―学力保障と人格発達を統合する高校教育
著者等紹介
川勝博[カワカツヒロシ]
1945年生まれ。名古屋大学理学部物理学科卒業後、愛知県立高校で物理を中心に数学・化学・地学を教える。1997年4月、香川大学教育学部教授。日本理科教育学会評議員、日本物理学会・物理教育委員、日本学術会議理学・数学教育専門委員長(19期)、IUPAP・ICPE(国際物理教育委員会委員)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
-
- 和書
- 橋を渡る 文春文庫