出版社内容情報
学習意欲の衰退は極限に達しているといわれる現代の高校。本書は、従来の高校教育に関する固定観念を越え、困難な情況の中で生徒を引き付け、生徒と教師の関係を築き直している社会科、家庭科授業の8つの斬新な実践例を収録。望ましい授業とは何かを考える。
[巻頭言]教えと学びの交響する教室へ(竹内 常一)
まえがき
現代の青年(井沼 淳一郎)
コラム 「授業のアイディア」(杉山 雅)
新たな「学校文化」との出会い(風巻 浩)
高校生と戦争──書いて対話する(井ノ口 貴史)
日本史教育と高校生(井ノ口 貴史)
コラム 世界を「他人ごと」から「自分ごと」に引き寄せる試みとその可能性──イラク対話プロジェクトの取り組みから(菅間 正道)
世界史教育の現代社会的アプローチ(桑山 俊昭)
「先生、話し合いもいいもんだね」──授業は、生徒とともに真実をさがす旅(小泉 秀人)
コラム 映画で学ぶ(家長 知史)
家庭科をとおして生徒と語る(三浦 きみ子)
総合「性と生」──ともに学びあうことで自分を肯定的に見られる力をつけたい(小嶋 真奈)
[解説]社会の授業を変える(子安 潤、山田 綾)
社会の巻 まえがき
社会を学ぶというと、概ね暗記科目として多くの高校生に嫌われています。「なんでそんなことまで知っているの!」と異星人をみるように教師を眺めている高校生も多いわけです。これは決して尊敬しているのではなく、意味のないことに精力を注いできた奇妙な人間と映っているわけです。
しかし、社会に関わる内容は、本当は高校生の今の暮らしにも、将来の生活にも深く関わっています。確かにそうなのですが、そうはいっても高校生は授業に乗ってきてはくれません。ところが、本書に集められた実践は、完璧ということではありませんが、生徒たちの社会についての疑問に応え、社会や生活についてより深く考える世界へと誘っています。驚くほどの集中と感動を引き起こしています。そんな教室が日本の高校にあるのです。それが何によって可能となったのか、ともに考え合っていきたいと思います。
高校は本当に多様化されました。「個性」に応じて配分され入学してくるはずなのですが、実際には全般的に学習意欲が低く、授業の成立さえ困難な状況があります。それは、課題山積校だけではありません。本書は、この恒常的な授業の不成立、教育することの難しさにどのよ社会を主題的に取りあげる教科は、高校の場合、地歴科と公民科、いわゆる社会科だと思われがちですが、そればかりではありません。どんな教科もどこかに社会との接点を持っていますし、家庭科や保健体育科、さらに「総合的な学習の時間」においても社会を取り立てて学びます。だから、社会科の各科目の授業ばかりでなく、家庭科や総合学習として取り組まれた実践記録も掲載しています。本書が「社会科」ではなく、「社会」となっているのはそのためです。その意味でいろいろな教科の先生たちにも読んでいただきたいと思います。
本書を契機に高校の教育実践が広く捉え返され、21世紀を担う思慮深い市民が育っていくことを期待したいと思います。
子安 潤
目次
現代の青年
新たな「学校文化」との出会い
高校生と戦争―書いて対話する
日本史教育と高校生
世界史教育の現代社会的アプローチ
「先生、話し合いもいいもんだね」―授業は、生徒とともに真実をさがす旅
家庭科をとおして生徒と語る
総合「性と生」―ともに学びあうことで自分を肯定的に見られる力をつけたい
解説 社会の授業を変える