出版社内容情報
再び教科書検定に登場した「新しい歴史教科書をつくる会」の中学校歴史・公民教科書。日本を「戦争できる国」に、子どもたちを「戦争する人間」に変え、「天皇中心の国」づくりをもくろむ危険な歴史観、社会観を多方面から検証する。
はじめに――アジアでともに生きるために
1 ふたたび「裏口入学」した「つくる会」歴史教科書――よみがえる皇国史観のキケンな本質(上杉 聰)
2 加害の記憶の抹殺と女性蔑視(西野瑠美子)
3 無視される沖縄と女性(大森明子)
4 洗脳とルール無視で貫かれた『新訂公民』教科書――『改訂歴史』以上に危険な内容(高嶋伸欣)
5 まとめ 時代遅れで指導要領に最も反している「つくる会」教科書(高嶋伸欣)
はじめに――アジアでともに生きるために
今年の三-四月、これまでにない大規模な抗議や「反日」デモが、韓国・中国の各地へと広がった。「竹島」をめぐり、または日本の国連常任理事国入りや首相の靖国参拝に反対するプラカードの中に、「新しい歴史教科書をつくる会」(以下「つくる会」)による教科書が「検定合格する」、あるいは「した」ことへの、激しい異議申し立てが含まれていた。
時に暴力にまで発展したこの反日行動は、これまでのようにゆるやかで通り一遍の抗議を行なっても、小泉政権がけっしてその方針を変えないことへの根深い不信感の産物であったろう。あとは実力で民衆の声を届けるしかないというのが、韓国・中国政府の本音であったかもしれない。
これに対する日本側の反応も、また強い反発にいろどられていた。「冬のソナタ」以来の韓流ブームも、中国市場目当ての商戦ブームも、どこかへ吹き飛ばす勢いであった。嫌韓・嫌中ムードが広がった。互いの感情的な対立が、やがて憲法の改悪や政治的・軍事的な対立へとつながるマグマに成長しかねないおそれを感じたのは私たちだけではないだろう。
だが、バンドンにおける小泉首相の謝罪演説と日中首脳会談をへくとも、このように好戦的、破壊的な教科書を、平和なアジアをつくるために採択すべきでない。そうした思いで、共同執筆を私たちは思い立った。戦争へと向かう心理が、これ以上日本社会に膨らまないことを願って。
二〇〇五年五月一〇日
執筆者一同
内容説明
改憲と核武装を目指す人びとの願望を子どもたちに押しつける有害教科書の本質を暴く。
目次
1 ふたたび「裏口入学」した「つくる会」歴史教科書―よみがえる皇国史観のキケンな本質
2 加害の記憶の抹殺と女性蔑視
3 無視される沖縄と女性
4 洗脳とルール無視で貫かれた『新訂公民』教科書―『改訂歴史』以上に危険な内容
5 まとめ 時代遅れで指導要領に最も反している「つくる会」教科書
著者等紹介
上杉聡[ウエスギサトシ]
日本の戦争責任資料センター事務局長。関西大学文学部講師
大森明子[オオモリアキコ]
沖縄在住、フリーライター。沖縄戦、軍隊と女性・平和の問題に関心を寄せている
高嶋伸欣[タカシマノブヨシ]
琉球大学教授。高嶋教科書裁判(旧横浜教科書裁判、93年提訴)原告
西野瑠美子[ニシノルミコ]
「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW‐NETジャパン)共同代表
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。