コミック会話―自閉症など発達障害のある子どものためのコミュニケーション支援法

グレイ，キャロル【著】〈Ｇｒａｙ，Ｃａｒｏｌ〉/門 真一郎【訳】

明石書店（2005/05発売）

• サイズ B5判／ページ数 22,1／高さ 26cm
• 商品コード 9784750321202
• NDC分類 378
• Cコード C0037

出版社内容情報

簡単な描画と色をつかい進行中の会話を図示することで、自閉症の子どもとの情報交換、コミュニケーションを支援する道具、コミック会話。本書は、その実践的な使用法を懇切丁寧に解説した初の「コミック会話」入門書。巻末にはコピーして使えるシートを収録。

"訳者あとがき
　この冊子は、キャロル・グレイ（Carol Gray）が著したComic Strip Conversations（1994年Future Horizons刊）を訳したものです。
　キャロル・グレイは、原書の解説によれば、自閉症の子どもを20年にわたって教育してきた方で、米国ミシガン州ジェニスンのジェニスン公立学校で自閉症スペクトラム障害（ASD）の子どものコンサルタントして、さまざまな教育場面や就労場面で、子ども、親、専門家に関わっています。現在はさらに、ASDの人およびASDの人のために働いている人にサービスを提供するNPOである The Gray Center for Social Learning and Understandingの所長を務めています。グレイは、毎年世界中で講演やワークショップを開催してきた功績に対して、何度も表彰されています。例えば、ASDの人の教育に関する国際的な貢献に対してバーバラ・リピンスキー賞が授与されました。
　グレイはASDの人たちを支援するための教材や方法を他にもいろいろと開発しています。主なものに、2000年のThe New Social Story Book, Illustrated Editionや、2002年のThe Sixth Sense II，My Social Stories Book（『マイソーシャルストーリーブック』安達潤監訳、スペクトラム出版社、20br>　「ソーシャル」という英単語は、普通「社会的」と画一的に訳されることが多いのですが、外国語がすべて日本語と１対１対応するはずもなく、画一的に訳されると意味が十分に伝わらないことがあります。「ソーシャル」という語は、「社会的な」というよりも「対人関係の」「対人的な」「社交的な」「世間の」とする方が、その意味が伝わりやすいことがあります。自閉症スペクトラム障害関係の文章に出てくる「ソーシャル」の場合は特にそうです。この冊子でも「ソーシャル」は、主として「対人関係」という語を使って訳しました。
　したがって、ソーシャルな情報とは、対人関係に関する情報、社交に関する情報といった意味です。自閉症スペクトラム障害の子どもが、他者との関係の中で、つまり対人関係の中で適切な言動をとるには、相手の言葉だけではなく、言葉以外のソーシャルな情報をも理解する必要があります。人が発した言葉を、通常の意味とは違う意味に解釈しなくてはならない場合（慣用表現、冗談など）が往々にしてあります。場合によっては正反対の意味に解釈しなければならない場合（皮肉、慇懃無礼な言葉など）もあります。自閉症スペクトラム障害の子どもには、相手の意図や感情。一般のコミックと同様、台詞を吹き出しに入れたり、状況説明を加えたりして、視覚的に理解しやすくします。しかも吹き出しの描き方により、実際に語られた言葉とその言葉の背後の意味や意図を識別しやすくします。さらには言葉に色をつけて、感情を表現しやすくします。このように自閉症スペクトラム障害の子どもの苦手とするソーシャルな情報の理解、自分の感情の表現などを、彼らの得意な視覚的な手段で支援し、さらに絵を時間の流れに沿って並べていくことにより、苦手な順次情報処理をも支援するものです。
　この冊子には、コミック会話についての実際的な使用法が懇切丁寧に書かれており、また付録にはコピーして使えるシートが添えられています（日本語版はB5判〔原書はA4判〕ですが、拡大縮小コピーが簡単にできるご時世なので、使用される方が子どもに合わせてサイズを調整されるとよいでしょう）。

２００４年１２月１９日
門　眞一郎"

著者等紹介

グレイ，キャロル［グレイ，キャロル］［Ｇｒａｙ，Ｃａｒｏｌ］
米国ミシガン州ジェニスン公立学校で、長年にわたり教師およびＡＳＤの生徒のコンサルタントを勤めた。（ＮＰＯ）Ｔｈｅ　Ｇｒａｙ　Ｃｅｎｔｅｒ　ｆｏｒ　Ｓｏｃｉａｌ　Ｌｅａｒｎｉｎｇ　ａｎｄ　Ｕｎｄｅｒｓｔａｎｄｉｎｇ所長。ＡＳＤの人への教育活動に対して、バーバラ・リピンスキー賞を授与された

門真一郎［カドシンイチロウ］
１９７３年、京都大学医学部卒業。京都市児童福祉センター副院長。児童精神科医
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[Totsuka Yoshihide]

キャロル・グレイ著作、門眞一郎訳。自閉症など発達障害のある子どものためのコミュニケーション支援法として本書を読む。導入の仕方はわかったが、本書だけではどのように会話のシンボルを教えるかがわからなかった。動画を参照しながら再読すると理解が深まった。会話シンボル辞典は、基本的な会話のコンセプトの8つがある。「一度にみながら話す」「聞く」「聞く（グループの中のひとりとして）」「割り込み」「割り込み（2人がすでに話しているとき）」「大声と小言」「ことば（人がいったとき）」「思い」があることを知る。会話の色は有用。

2023/08/15

[るい]

言葉の裏が読めない時に、コミック会話を使って教える方法があると聞き、どういうものか知りたくて読んだ。棒人間を書き、言葉や思いを書き込みながら、状況を把握したり、今後の見通しをもたせたりすることができる。衝動性の強い子に使ってみたことがあるが、会話だけで話すと話がポンポン飛んで、最後まで納得しないのに対し、コミック会話を使うと、話が逸れずに最後まで話しきり、最終的に本人が納得して終わることができた。会話を色で分けることで、感情をつかむこともできると知ったので、今後、使っていきたい。

2015/03/01

[hana@マインドサポーター]

例えば「どうしてその言葉を言ったの？」というセリフがあったとして、それにはいろいろな意味が考えられる。それを、色で表現する、というのが面白かった。子どもは、いい意味でとらえたとしても、実は言った人は皮肉だった、みたいなのはよくあるから、「あなたは緑色(楽しい)でセリフを書いたけど、そのセリフがもし赤色だったらどんな意味になるかな？」「怒り？」みたいな会話の広がりがあったら面白そう。

2023/07/08

[しふぉん]

職場の先輩にお借りして。｢コミック会話｣という言葉は知っていたけど詳しく知らなかったので、やり方や進め方など勉強になった。色分けすることで気持ちも考えられるし、視覚化できるのは良さそう。必要そうなお子さんたちに明日から使ってみたい。

2021/02/23

[天気よみ]

仕事用に。 相手がこう考えてるはず、なんて決められない事なのに勝手に想像してしまうことがある。相手のすべてを理解するのは難しいけど、理解しようとする気持ちは絶対に忘れないようにしたい。

2016/05/01