出版社内容情報
冷戦の終焉とグローバリゼーションの進行は、安全保障の状況や理論にも当然影響を与えている。通貨危機や地球環境問題など新しい危機が生まれ、今までの安全保障で中心的存在であった国家による軍事力が通用しなくなり、NGOや地方自治体による日常的な対策・協力のためのネットワークの構築が重要視されている。このような変化に対応した新しい安全保障の動向・理論を分析した論文集。
第1部 安全保障論の新地平
第1章 新しい安全保障研究に向けて――現代「安全保障」概念の位相(佐々木寛)
1 はじめに――言説としての「安全保障」
2 安全保障問題の基本構成――「文明」としての「安全保障」
3 「人間の安全保障」論の生成――グローバル化と「安全保障」
4 「人間の安全保障」の落とし穴
5 <周辺>の「安全保障」――基地問題と原子力発電所問題を考える
6 「安全保障」の重層化と民主主義原理
7 おわりに――新しい安全保障研究の座標軸
第2章 環境リージョナリズム(地域主義)の意識を育てる――東アジアにおける環境安全保障と地域協力(ミランダ・A・シュラーズ)
1 はじめに
2 理論の検討
3 地域としての東アジア
4 環境の劣化がもたらす予期せぬ結果
5 環境保護を東アジアの政治課題に乗せる
6 民主化と「政治空間」の開放化
7 地域的な制度の構築と協力
第3章 ジェンダーの視点から見た安全保障(ロニー・アレキサンダー)
1 総論――安全とジェンダーは関係があるか?
2 事例――さまざまなレベルでのジェンダー・バイオレンスに対2 経済と安全保障という視点
3 軍事的安全保障と経済的相互依存
4 経済的脅威に対応する「経済安全保障」
5 東アジアにおける経済と安全保障
6 おわりに――経済的枠組から地域の安定装置へ
第3部 東アジアにおける安全保障の新展開
第1章 中国の新安全保障観と地域政策――一九九〇年代後半以降の新展開(高原明生)
1 はじめに
2 中国の軍事重視姿勢と外交的孤立の危険
3 協調的安全保障の提唱と上海協力機構の設立
4 総合安全保障の受容とASEANへの接近
5 中国の朝鮮半島政策の転換
6 おわりに
第2章 アメリカ外交と単独主義の伝統(佐々木卓也)
1 はじめに
2 単独主義の形成
3 冷戦時代の単独主義
4 冷戦の終焉と単独主義
5 単独主義の加速
6 おわりに
第3章 9・11以後の日米安全保障関係(我部政明)
1 はじめに
2 前方展開基地を提供する同盟国
3 日米安保と「沖縄問題」
4 沖縄統治コストは誰が負担するのか?
5 方向感覚を失った日米関係
6 二〇〇五年沖縄問題のゆくえ
7 国防長官を沖縄
はじめに
冷戦の終焉とグローバリゼーションの進行は、今日の世界の状況を大きく変貌せしめている。その結果として、安全保障をめぐる状況や理論も変わらざるを得ない。すなわち、冷戦時代における東西二大国による核戦争の脅威に代わって、グローバリゼーションによる通貨危機や麻薬・武器などの密輸、人の移動に際しての人権問題、地球環境問題など、これまでにない新たな危機が生まれ、深刻な課題となっている。また、これらの課題から分かるように、これまでの安全保障において中心的な手段であった軍事力が必ずしも通用しなくなり、日常的な対策や協力のためのネットワークの構築が重要になってきている。さらに、これらの「危機」に取り組んでいるのは、これまで安全保障を独占してきた国家では必ずしもない。NGO(非政府組織)や地方自治体、世論が重要な役割を果たすようになっている。以上のような変化と並行して、安全保障の理論的視座も変わらざるを得ない。本書は、東アジアを対象にして、安全保障をめぐるこのような状況の変化と、そのような変化に対応した新しい安全保障の動向および理論を分析した論文を編集したものである。
冷戦の終焉後、ようやく世界に平和な情勢が生ークの役割や連帯も重要な意味を持つようになっている。前述のように、新しい安全保障問題に対して軍事的な手段の有効性は限られており、その点からもNGOや専門家のネットワークが注目されなければならない。
もとより安全保障は国民のためのものであり、これまで述べてきたような安全保障の新しい状況を背景に「人間の安全保障」概念が登場してきたのも当然であった。しかし、市民にとって安全保障が自分たちのものであるというのは、安全保障の対象であるというだけにはとどまらない。安全保障の主体が市民であることは民主主義にとって欠くことのできない条件でもある。新しい安全保障がNGOの活動の対象となり、また軍事的な安全保障が対象とするような非日常的な事態ではなく、日常的な、市民の生活や社会と密接に関係している問題であることは、安全保障を市民の手に引き寄せ、民主主義の実現に近づくチャンスでもある。その意味において、新しい安全保障論はこれまでの安全保障論以上に広く論議されるべきである。
本書に収められた諸論文は、以上のことを視野に入れながら、新しい安全保障の状況と理論とを展望した。筆者である研究者の多くは、数年間にわたって立教大学のアジ
目次
第1部 安全保障論の新地平(新しい安全保障研究に向けて―現代「安全保障」概念の位相;環境リージョナリズム(地域主義)の意識を育てる―東アジアにおける環境安全保障と地域協力
ジェンダーの視点から見た安全保障)
第2部 安全保障論の再検討(グローバリゼーションと日本の安全保障における視座の転換;日本における安全保障概念の再検討;東アジアにおける経済と安全保障)
第3部 東アジアにおける安全保障の新展開(中国の新安全保障観と地域政策―一九九〇年代後半以降の新展開;アメリカ外交と単独主義の伝統;9・11以後の日米安全保障関係;テロの定義とは?)
著者等紹介
五十嵐暁郎[イガラシアキオ]
立教大学法学部教授
佐々木寛[ササキヒロシ]
新潟国際情報大学情報文化学部助教授
高原明生[タカハラアキオ]
東京大学大学院法学政治学研究科教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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