出版社内容情報
全国で23万人にも上る待機者がいる特別養護老人ホーム。本書は、入居金の全額融資から365日医療体制、ホテルサービスにも似た介護サービスといった、言わば民間版特養ホームの拡大を期待し、その理論的裏づけから設立・設計の実務までを詳解する。
はじめに
第1章 高齢社会と特養ホーム
第1節 高齢社会の現状――浮かび上がる高齢者像
第2節 高齢社会に対応する施設サービスの現状
第3節 高齢社会と特養ホーム
第4節 特養ホームをとりまく問題と課題
第2章 類似型老人ホームの新たな展開
第1節 有料老人ホームと老人福祉法
第2節 指導指針と有料老人ホーム
第3節 有料老人ホームの課題と展望
第4節 類似型老人ホームの展開
第5節 民間版特養ホーム『メディケアホーム』の登場
第3章 民間版特養ホームの定義と課題
第1節 民間版特養ホームの定義
第2節 入居金ゼロのシステム――生命保険担保融資システム
第3節 シルバーファンドの登場
第4章 民間版特養ホームの展望
第1節 広大な需要
第2節 遊休資産の転用と利子補給
第3節 民間版特養ホームの設計・設備
第4節 店頭公開・株式上場へ
資料編
1 高齢社会対策基本法
2 高齢社会対策の大綱について
3 特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準
4 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について
はじめに
介護保険法の施行にともなって介護事業者が急激に増え、施設サービスも多種多様に大きく拡大してきている。ことに遊休資産であった社宅・社員寮や保養所などを高齢者向けの介護施設に転用するなど、その試みは多くの困難を孕みつつも大きく前進しているといえよう。高齢者にとって施設介護サービスの選択肢がこのように拡大することは好ましいことであり、他方、質的向上をも介護事業者に望まないわけにはいかない。
しかし、公的施設である特別養護老人ホーム(以下「特養ホーム」という。)を見ると、目にするのは無数の待機者の存在であろう。いま現在、全国で二三万人にも上るといわれる待機者がいる。介護保険導入前の一九九八年度に厚生省(当時)が調べた数の五倍近くも増えているのである。というのも、特養ホームは補助金をもって運営される公的な施設であり、入居金を必要としないことで多くの低所得の高齢者にとってこの上ない入居施設であるからだ。それゆえ、一旦入居した高齢者は死に至るまで入居し続け、その死亡を待つほか空きが生まれない。このために入居するまで申込から一年や二年を要し、結果として全国で二三万人にも達する待機者が生まれているのである。待改修工事を行なったものが多く、廊下幅等有料老人ホームの設置基準に合致しない類似型老人ホームともいうべきものである。ここで類似型老人ホームとは、老人福祉法でいう有料老人ホームではないということである。老人福祉法でいう有料老人ホームとは、介護を目的に施設を設ける場合のことをいい、「介護」と「所有」が一体のものを指す。したがって、「所有」と「介護」が分離した『民間版特養ホーム』の場合には、老人福祉法でいう有料老人ホームとはいわない。しかも、こうした『民間版特養ホーム』の各居室にはホットプレートなどのミニキッチンが配置されて自炊を建前としていることから、主に食事の提供をして介護を行なう有料老人ホームとは異なる。こうしたことから『民間版特養ホーム』は老人福祉法の規制を受けることなく、事前協議から始まる一連の設置届を必要としない。『民間版特養ホーム』は老人福祉法の規制を受けないこともあって、今後、飛躍的に拡大していくだろう。
筆者は『民間版特養ホーム』の拡大を期待するとともに、本書に対する読者から多くのご批判、ご意見、評価を受けていきたいと考えている。
二〇〇四(平成一六)年夏 横浜にて
行政書士 岸本和博
目次
第1章 高齢社会と特養ホーム(高齢社会の現状―浮かび上がる高齢者像;高齢社会に対応する施設サービスの現状 ほか)
第2章 類似型老人ホームの新たな展開(有料老人ホームと老人福祉法;指導指針と有料老人ホーム ほか)
第3章 民間版特養ホームの定義と課題(民間版特養ホームの定義;入居金ゼロのシステム―生命保険担保融資システム ほか)
第4章 民間版特養ホームの展望(広大な需要;遊休資産の転用と利子補給 ほか)
資料編
著者等紹介
岸本和博[キシモトカズヒロ]
行政書士。1951年徳島県小松島市中郷に生まれる。1967年大阪府立泉大津高校入学。1970年中央大学入学。1975年東京都庁に入都。1984年行政書士試験に合格。現在、医療行政センター所長
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