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行政サービスの決定と自治体労使関係

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  • サイズ A5判/ページ数 279p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784750319728
  • NDC分類 318.3
  • Cコード C0036

出版社内容情報

市民への資金の貸付、補助金の交付、税金の算定・徴収、保健福祉、公共施設の提供など地方自治体の行政サービスの決定において、中央との関わりや自治体の裁量、そして労働組合の関与など望ましい労使関係を、本書は1県、2市、1町の調査事例をもとに提示。

第1章 目的と課題
1.行政サービスの決定
2.中央・地方の政府間関係
3.行政裁量
4.行政サービスの決定と労働組合
5.課題と方法

第2章 事前協議制の定着と参加への歩み
1.はじめに
2.事前協議制の定着
大規模機構改革と事前協議(1972年)/周到な準備と強硬姿勢(1979年)/革新系知事の誕生と事前協議制の定着/小括
3.組合の組織構造と交渉協議機構
組織構造/本部と総支部/交渉協議機構
4.行財政改革と財政非常事態宣言
行財政改革(第1期)/財政非常事態宣言と行財政改革(第2期)/労働組合の対応/小括
5.機構改革
2000年度機構改革/組織内交渉と事前協議/経済部の機構改革/対立点/小括
6.組織の再編統合(保健所)
組合の方針/再編統合(26保健所・21支所へ)/見直し(26保健所・14支所へ)/小括
7.むすび

第3章 参加路線と充実した労使協議機構
1.はじめに
2.参加の進展
革新市長の誕生と労使紛争/労使懇談会と住民要求調査/健福闘争と市民ニーズ調査/小括
3.交渉協議機構と参加
組合の組織構造と機関構成/交渉協議機構と付議事項/行財政改革/健福協議使関係
組織の再編統合/機構改革/定員変化/まとめ
4.行政への「参加」
5.背景と意義

 地方自治体で働く人々、とりわけ、忙しい中、組合活動に従事している人々、当局側として彼らとの交渉や協議に携わっている人々に、本書を読んでほしい。私は強くそう思う。
 私たちが本書で描き出そうとするのは、一つの県、二つの市、一つの町における組織の再編統合、機構改革、定員変化をめぐる労使間の話し合いであり、さらに、事例によっては、行政諸施策にかかわる労使間の話し合いである。すでに、そうした話し合いが行われている自治体で働く人々にとっては、それはあたりまえのことであり、ことさら読むに値しないと思うかもしれない。だが、それでも、自らの経験と本書で綴られる経験を比較し、自分たちの位置を確かめてほしい。もし、話し合いがない、あるいは形式的な話し合いにすぎないというならば、本書をまじめに読んでほしい。そして、自分たちとは違う考えをもって、労使関係を築き上げてきた仲間の経験に学んでほしい。
 これらの課題についての労使間の話し合いは、地方自治体が提供する行政サービスの内容・質・量を、部分的にではあれ、決定する。これが、私たちが本書で主張したいことの一つである。地方自治体の行政サービスの決定が、国会、中央省庁、地方議会、地び行政学に関心を抱く人々にも本書を読んでいただきたい。私の専門は労使関係論であり、行政学の専門家ではない。だから本書も労使関係に関する本であって、行政学とは無関係だと思われるかもしれない。
 「行政学は、国家の任務の中で、政策の執行を委ねられた行政システムと、その担当者である公務員集団の活動を説明することを目的としている」(村松岐夫『行政学教科書』有斐閣、1999年、1頁)。この定義に従えば、「公務員集団」のうち管理される側の職員から構成される労働組合が、当局との間で取り結ぶ労使関係もまた、行政学の研究領域に入るように思われる。しかも、上述したように、行政サービスの決定にかかわる重要な関係である。
 行政サービスの決定において、地方自治体は中央省庁の厳しいコントロールの下にあるわけではなく、地方自治体にも独自の決定領域がある。予算、事業計画、条例などの形で、提供する行政サービスが公示されたとしても、実際に、どのようなサービスがどの程度、提供されるかは一義的には決まらない。以上の中央・地方政府間関係、行政裁量に関する研究の成果から、私は多くを学んだ。だが、それらの研究において、労働組合や労使関係が明示的に取り上んでもらいたいと願う。制度改革を論ずる際に、是非、現在の制度のもとで働き、生活している人々のことを忘れないでほしい。人間の行動のある側面を取り上げ、特定の制約条件のもとで、いかに行動するかを理論的に考えることは、とても重要であり、有用だと私は思う。だが、理論を現実に適用する際には、慎重でなければならないとも思う。そうした慎重さに欠け、節度を忘れた人々が、ごく一部ではあるけれど、存在する。しかも、制度改革論議の中心にいたりする。制度改革が働く人々にどのような影響をもたらすのか、これをリアリティをもって認識するためにも、本書を手に取ってほしい。(後略)

内容説明

著者たちが本書で描き出そうとするのは、一つの県、二つの市、一つの町における組織の再編統合、機構改革、定員変化をめぐる労使間の話し合いであり、さらに、事例によっては、行政諸施策にかかわる労使間の話し合いである。これらの課題についての労使間の話し合いは、地方自治体が提供する行政サービスの内容・質・量を、部分的にではあれ、決定する。これが、著者たちが本書で主張したいことの一つである。地方自治体の行政サービスの決定が、国会、中央省庁、地方議会、地方自治体によってなされることを知らないわけではない。これらの当事者と並んで、地方自治体の職員から構成される労働組合もまた、労使間の話し合いを通じて、行政サービスの決定に関与する場合がある。これが著者たちの主張である。

目次

第1章 目的と課題
第2章 事前協議制の定着と参加への歩み
第3章 参加路線と充実した労使協議機構
第4章 行政システムの検討と参加への胎動
第5章 機構改革、採用停止と労働組合
第6章 要約と合意