出版社内容情報
オーストラリア建国当時の歴史を、流刑された「女囚」、アボリジニ女性、「からゆきさん」、メラネシアの女性、中国人女性などの女性の生き様を通して探る。
プロローグ
第一章 「鎖につながれた女」と「産む女」
「鎖につながれた女」
犯罪者と流刑地
記録に残る「女囚」
パラマッタの「女囚」
オーストラリア植民地最初の母親
「女囚」の子ども
痛めつけられる「女囚」
「家政婦」と「買売春」
「女囚」であること
略奪されるオーストラリアと女性
流刑地から自由移民植民地へ
ナショナリズムの台頭
オーストラリア人の望ましいタイプ
「白いオーストラリア」と「女であること」
「白い子ども」を産む女性
国家行事としての出産
「産めよ、殖やせよ」
歴史の誤算
第二章 「ブラックベルベット」――アボリジニ女性
「ブラックベルベット」
連れ去られる女性
牧畜産業とアボリジニの悲劇
連れ去られる子ども
ジン・ハント(gin hunt)
食料と交換される女性
アボリジニ女性のセクシャリティ
アウトバックとアボリジニ女性
「男」と「女」と白豪主義
「コンボ」と呼ばれた男性
法と愛と性
子どもを奪う法律
「国家の子ども」
引き裂かれた母子の愛
「失われた世代」の後遺症> 「カナカ」労働者排斥
連邦成立
第五章 「イエ」を守る中国人女性
オーストラリアにやって来た中国人
ゴールドラッシュと中国人
中国人に対する敵意
中国人排斥
クイーンズランドの中国人
西オーストラリアと北部準州の中国人
中国人女性
連邦成立と移民制限法以降
「女であること」
エピローグ
プロローグ
オーストラリアの歴史には、女性がいない。国づくりの女神、天照大神も、卑弥呼のような古代日本のミステリーを誘う女王もいなければ、ジャンヌ・ダルクのような国を救ったヒロインや、聖母とあがめられるマリアもいない。あるのは開拓者であり建国や国家政策にたずさわった男性の物語だけである。
男性たちは、歴史をなんと無味乾燥なものにしているのだろう。
表舞台で活躍する男性の機械的なマインドでつくりだされる、年号や政策で表現される歴史ではなく、その裏で画策する生身の人間の物語にこそ歴史の旨みがある。男性がいて女性がいて、さまざまな人生ドラマが生まれる。人にはその時代に生きていくすべや思惑があり、そのドラマがいっぱいつまったものが歴史の醍醐味であろう。
女性がかかわることで、とたんに歴史の旨みが出る。
本書は、女性に焦点を合わせてオーストラリアの歴史を描いたものである。イギリスの流刑植民地として出発したオーストラリアが、イギリスから独立し、国民国家をつくっていく過程において登場した女性の物語である。
日本が明治維新を経て近代国家への道を歩むのに苦悶していた頃、海をはさんだオーストラリアでも、国居場所だった。捕鯨、アザラシ猟、金の採掘、羊や牛の放牧など、オーストラリアの発展を支えた産業は、「男」同士の友情や結束は生みだしたが、女性を含む家族との絆の上には成り立っていなかった。
オーストラリアの女性史は「鎖でつながれた女」からはじまる。窃盗などの罪でオーストラリアに流刑になった貧しいイギリス人女性は、船に乗せられた時からすでに男性の「所有物」であった。「支配する者」と「支配される者」が隣接する流刑植民地にあって、「女囚」は、女性であることを利用して、鎖をはずされることを望んだ。「女囚」は、オーストラリアで最初の母親となっていく。
オーストラリアにやって来たイギリス人男性が目にしたのは、自然の中で全裸で暮らす狩猟採集民アボリジニであった。開拓者として男性ばかりの殺伐とした生活の中で、アボリジニ女性の存在はイギリス人男性の血を躍らせたという。乾燥した不毛の大地を舞台に繰り広げられた関係は、一般的に「アボリジニ対白人」というカテゴリーの中で語られるにはあまりにも生臭い。
アボリジニ女性は、常に白人開拓者の性的犠牲になった。両者の間には男女の愛が生まれることもあったが、「白いオーストラリア」の実現人女性と同様に重労働にあえいだのである。
歴史はまるで男性を普遍的な人間として描くが、実際には、そこには女性もいたはずである。一口に「白人」とか「アボリジニ」といっても、男性と女性ではその経験は全く違う。従来語られてきたオーストラリアの歴史に、女性という色を加えたら、どんな絵図ができあがるのだろうか。本書はそんな試みに挑戦したものである。(後略)
内容説明
本書は、女性に焦点を合わせてオーストラリアの歴史を描いたものである。イギリスの流刑植民地として出発したオーストラリアが、イギリスから独立し、国民国家をつくっていく過程において登場した女性の物語である。
目次
第1章 「鎖につながれた女」と「産む女」(「鎖につながれた女」;犯罪者と流刑地 ほか)
第2章 「ブラックベルベット」―アボリジニ女性(「ブラックベルベット」;連れ去られる女性 ほか)
第3章 「からゆきさん」と呼ばれた女性(海を渡った日本人;オーストラリアにかけた夢 ほか)
第4章 メラネシアの女性(消された、「女であること」;「カナカ」労働者 ほか)
第5章 「イエ」を守る中国人女性(オーストラリアにやって来た中国人;ゴールドラッシュと中国人 ほか)
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Richard