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パナマを知るための55章

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  • サイズ B6判/ページ数 275p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784750319643
  • NDC分類 302.578
  • Cコード C0336

出版社内容情報

世界の十字路として500年の歴史を刻む中米南端の国パナマ。米国の支配下にあった運河地帯が1999年12月に返還され、経済、金融をはじめ新たな国際交通路として世界が注目する。緑にあふれ歴史遺産を数多く残すカリブ海の小国の魅力が満載。

はじめに
 1 数字で読む世界のなかのパナマ
第1章 国 土――運河で東西にニ分割された熱帯の小国
第2章 人びと――人種のるつぼと多民族社会
第3章 政 治――民主化を目指す新しい政治構造
第4章 経 済――サービス産業に依存する特異な経済構造
第5章 社 会――格差のある不平等な社会
第6章 教 育――高い教育水準と格差のある現状
 2 地球の十字路
第7章 コロンブスとパナマ地峡――新旧大陸の文明の衝突
第8章 ダリエンとスペイン人――バルボアによる太平洋の「発見」
第9章 「太平洋の女王」――黄金の王都パナマ市
第10章 「王の道」――新大陸の財宝を運んだロバの道
第11章 カリブ海の宝石ポルトベーロ――独占貿易港と黒人奴隷市場
第12章 エルドラードとしてのパナマ――ヨーロッパ人による財宝争奪戦の舞台
第13章 先住民と新住民――新しい地域社会の形成
 3 運河建設の夢の実現に向けて
第14章 群がる野望とパナマ地峡――しのぎを削る運河候補ルートの探査活動
第15章 地峡を横断するパナマ鉄道の建設――アメリカ西部のゴールド・ラッシュで増大する輸送需要
第16章 レセップスの挑戦と挫折最大の装置
第26章 運河条約の系譜――パナマの主権闘争で念願の新運河条約を実現
第27章 運河の利用状況と水資源――船の大型化とコンテナ貨物の急増、新たな水資源を求めて
 5 パナマ運河の政治学
第28章 アメリカ帝国主義――強まる運河支配
第29章 パナマ国内政治の力学――旧支配層vs市民派
第30章 アルヌルフォ・アリアスとポプリスモ――大衆動員型政治の成立
第31章 第二次世界大戦とパナマ運河――国際紛争の最前線と化した運河
第32章 冷戦下のパナマ運河と軍部の台頭――レモン司令官を中心に
第33章 新パナマ運河建設構想と日米関係――新運河建設の調査に日本も参加を表明
第34章 第二パナマ運河建設に向けての調査――アメリカ・パナマ・日本の三カ国「パナマ運河代替案調査委員会」の発足
 6 反米から自立へ
第35章 高まる反米運動――主権をめぐるパナマ人の闘い
第36章 パナマ・ナショナリズム――われわれの国旗を掲げよ!
第37章 トリホス将軍と一九七七年の新運河条約――約束された運河の返還
第38章 ノリエガ将軍とアメリカの侵攻――再び忍び寄るアメリカの影
第39章 運河返還を前に揺れるパナマ市民――メリカ支配一〇〇年が残したもの――従属から自立への道
第50章 運河地域の再開発――旧米軍施設は研究学園都市やリゾートホテルに再活用
第51章 パナマの産業開発戦略の行方――地域間経済格差の是正が最大の課題
第52章 観光立国に向けて――コスタリカに学ぶ豊かな自然と歴史遺産の活用
第53章 女性パワー――社会進出するパナマの女性たち
第54章 スポーツに見る新しい波――個人の運動能力の高さで世界に飛躍
第55章 パナマの先住民――過去と現在
【コラム1】新生パナマが取り組む環境保全政策
【コラム2】「王の道」を探す
【コラム3】パナマ運河鉄道にはじめて乗った日本人
【コラム4】パナマ運河とスエズ運河
【コラム5】パナマ運河爆砕作戦
【コラム6】パナマ運河と日本人
【コラム7】米ドルとパナマ通貨バルボア
【コラム8】さらば星条旗――密かに行われたアメリカ国旗返還式典
参考文献案内

 北アメリカ大陸と南アメリカ大陸を捻じ曲がった紐のような形でむすんでいる中米地峡の南端に位置するパナマについては、人類の歴史に残る記念碑的建造物である「パナマ運河」のある国として、誰もがその名を知っている。しかしパナマが運河だけの国ではなく、世界の十字路として五〇〇年の歴史を刻んだ魅力的な国であることを知る人は少ないのではないだろうか。
 ラテンアメリカ諸国のなかでも、パナマほど複雑な経緯を経て現在の主権国家を樹立した国はない。「三回独立した」とよく言われるが、パナマはスペインから独立し、次いでコロンビアから独立し、そしてアメリカから「独立」した経験を持っている。スペインの植民地のヌエバグラナダ副王領の一部であったパナマは、スペインから独立した一八二一年にはグランコロンビア共和国(現在のコロンビアとベネズエラとエクアドル)の一部であった。その後グランコロンビアが分裂した一八三〇年にはヌエバグラナダ共和国の一地方となった。一八八六年には現在のコロンビア共和国が成立したが、中米地峡に大西洋と太平洋をむすぶ運河の建設を熱望したアメリカ合衆国の強力な支援によって、一九〇三年にパナマ地方はコロンビアから分離独立したのたら、私たちの目的は達成されたことになる。

二〇〇四年七月
著者一同

内容説明

運河建設というアメリカの野望と後押しで一九〇三年に独立したパナマは運河のためにアメリカに支配され続けたが、現在のパナマは自立した新しい時代を築こうと努力をする主権国家である。アメリカの軍事基地は熱帯雨林を保護するために国立公園へと変貌し、アメリカ人だけしか入れなかった地域がパナマ国民に開放され、星条旗が翻っていた建物や丘の上に、現在はパナマ国旗が掲げられている。貧困問題をはじめ多くの難問を抱えているが、パナマは緑豊かな国土と歴史遺産を保全し、運河を中立的な国際交通路として運営しながら、国民が豊かに暮らせるための国土開発と社会改革に取り組んでいる。そのようなパナマの姿を読者に紹介する。

目次

1 数字で読む世界のなかのパナマ
2 地球の十字路
3 運河建設の夢の実現に向けて
4 パナマ運河の建設
5 パナマ運河の政治学
6 反米から自立へ
7 モノとカネとヒトの交差点
8 目指す運河を越えた新しいパナマ

著者等紹介

国本伊代[クニモトイヨ]
中央大学教授。ラテンアメリカ近現代史専攻

小林志郎[コバヤシシロウ]
旧日本貿易振興会職員。パナマ運河代替案調査委員会日本政府代表。パナマ政府投資顧問。国際開発コンサルタント。大学講師。パナマ運河研究家。途上国産業開発論専攻

小沢卓也[オザワタクヤ]
京都産業大学、神戸女学院大学、立命館大学、龍谷大学、各非常勤講師。アジア・アフリカ研究所所員。ラテンアメリカ近現代史専攻
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