帝国化するメジャーリーグ―増加する外国人選手とMLBの市場拡大戦略

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  • サイズ B6判/ページ数 234p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750319476
  • NDC分類 783.7
  • Cコード C0075

出版社内容情報

よりハイレベルの戦いの場を目指す日本人選手、貧困からの脱出を夢見るラテンアメリカの若き選手。メジャーの28%を占める外国人選手の実像と、世界の野球市場を支配しようとするMLBの戦略を、豊富な現地取材を通して明らかにする野球ファン必読の書。

はじめに

第1章  メジャーリーグの今
 外国人選手の増加
 外国人選手はなぜ増えるのか
 外国人はいつからメジャーリーグでプレーできるようになったのか
 働く場所を外国人選手に奪われた米国人選手たち
 ビザ
 ラテンアメリカにおける問題
 メジャーリーグからの二重の脅威:日本における問題
第2章 メジャーリーグ市場の海外への拡大
 メジャーリーグの外国への営業拡大戦略
 外国で試合を開催するメジャーリーグ
 メディアを利用して収入を得て、ファンをつかむ
 メジャーリーグ承認商品の販売戦略
 ヨーロッパへの進出
 野球“布教”という社会貢献と、市場拡大戦略
 外国にメジャーリーグ球団は誕生するか
 ワールドワイドドラフト
 ヤンキースとマイノリティ選手:ヤンキースが松井を獲得した歴史
第3章  諸外国はメジャーリーグとどのようにかかわってきたのか
 メジャーリーグに選手を送り込んできた諸外国はどのように米国野球とかかわってきたのか
 各国の反応
 キューバ
 メキシコ
 ドミニカ共和国
 プエルトリコ
 ベネズエラ
 カナダ
 オーストラリア
 韓国

" 新しい世界を目指して飛び出していく選手たち。現在の地位も、築いてきた実績も惜しまずに、自らの力の限界に挑もうとして、より険しい場所に行こうとする。人並みより桁外れの身体能力を持ってプレーする選手たちが、自分の肉体が衰えていくその前に、自分を思い切りぶつけることのできる舞台を求める。日本球界を飛び出してメジャーリーグへと移る際に、醜いゴタゴタ劇になったケースもあったが、私には、彼らの志に惹かれるものがあった。
 私は、メジャーリーグでプレーする日本人選手を取材するために、米国に出張してきていた。取材場所や取材時間はあらかじめ定められており、球団からは毎試合ごとに豊富なデータが配布された。私も選手と同じように、メジャーリーグでの仕事のやり易さを感じていた。
 米国での取材活動に味をしめた私は、勤めていた新聞社の米国駐在員となった。短い出張期間では感じることのできなかったものに、視線が向くようになった。メジャーリーグで活躍する外国人選手たちだ。米国人を夫としたことで、日本人である自分を何度か意識しなければいけない局面に立たされたせいもあるのかもしれない。外国から野球をするためにやってきた選手たちのことが気にか本球界の参考になるのではないかと思うようになった。また、日本以外の外国がメジャーリーグとどのような関係を築いているのかを知れば、日米球界の今後を占う上での材料になるかもしれないと考えた。
 米国ではつらつと活躍する選手たちを見ながら、その一方では母国、日本の野球は衰退していくのだろうかと気にかかる。ラテンアメリカからの選手たちは「自分がメジャーリーグで活躍することが、母国の野球発展に役立つのだ」と異口同音に胸を張った。そうとは言い切れない、日本人の私が身勝手ながらも、答えの糸口をつかもうとして調べはじめたものである。
 二〇〇三年現在、メジャーリーグでプレーする選手の二八%は米国外で生まれた外国人選手である。メジャーリーグ傘下のマイナーリーグでは約半数が外国人選手だ。
 選手の出身国はラテンアメリカの国々(ここではメキシコ、カリビアン、中米、南米を指す)を中心に二〇ヵ国にのぼる。アルーバ、オーストラリア、カナダ、コロンビア、キューバ、カラカオ、ドミニカ共和国、イギリス、ジャマイカ、日本、韓国、メキシコ、ニカラグア、パナマ、プエルトリコ、ベネズエラ、バージン諸島などだ。
 カナダ・モントリオールに本拠地組織そのものも、米国内から飛び出して行こうとしている。
 メジャーリーグは、日本やメキシコ、プエルトリコなどの外国でメジャーリーグの公式戦を行い、多くの観客を動員している。ヨーロッパでも子どもたちを対象にしたイベントを開催。そして、メジャーリーグ承認の商品を世界各国で売りさばいている。これらはメジャーリーグの市場を米国だけでなく、他国にも拡大するための戦略である。今、スポーツの国際化という言葉がよく使われる。メジャーリーグもその例外ではない。現在、メジャーリーグは二通りの方法で国際化を進めている。
 1 世界各国の優秀な選手を引き抜いて、メジャーリーグでプレーさせること
 2 メジャーリーグのファンを世界各国に広げて、市場を拡大して利益をあげること

 二〇〇一年七月、イチローが初出場したオールスターゲームのセレモニーではインターナショナルがキーワードであった。日本人のイチローをはじめ、実力のある外国出身選手たちがファン投票で選出されていた。シアトル・セーフコフィールドのバックスクリーンに「Baseball was born in America, but now it belongs to the world(野球はアメリカで生まれたが、今は世界中のものであリーグになっているし、メキシコのメキシカンリーグも、メジャーリーグから独立はしているが、公式にマイナーリーグ3Aと同格扱いとなっている。
 社会学者のジョージ・セージによれば(『アメリカスポーツと社会』不昧堂出版、一九九七年)初期の商業資本主義は植民地主義に道をゆずり、二〇世紀に脱植民地主義に道をゆずり、現代の世界資本主義経済に通じている。直接的な植民地支配に従属する地域はすべて独立を勝ちとっており、新しい国家となった。直接的植民地支配の消滅は、国際資本主義的性格の著しい発展(多国籍企業の発展)に伴って起こった。このような資本主義の組織形態は、世界の経済に主要な影響を与えるようになってきた。何人かの社会科学者は、多国籍企業を「現代植民地権力」と呼んでいる。
 今、メジャーリーグは米国人をオーナーとする多国籍企業となり、他国に良質で低コストの選手という名の労働力を求める。また、その一方で購買能力のある他国には、公式戦という商品や、テレビの放映権などを販売し、市場を拡大している。メジャーリーグは「現代植民地権力」として他国のプロ野球リーグに大きな影響を与えているのではないだろうか。"

内容説明

日本プロ野球はメジャーリーグ傘下になってしまうのか!?よりハイレベルな戦いの場を目指す日本人選手。貧困からの脱出を夢見るラテンアメリカの若き選手たち…。巨大スポーツビジネス=MLBの舞台裏を在米ジャーナリストが豊富な現地取材で明らかにする。

目次

第1章 メジャーリーグの今(外国人選手の増加;外国人選手はなぜ増えるのか ほか)
第2章 メジャーリーグ市場の海外への拡大(メジャーリーグの外国への営業拡大戦略;外国で試合を開催するメジャーリーグ ほか)
第3章 諸外国はメジャーリーグとどのようにかかわってきたのか(メジャーリーグに選手を送り込んできた諸外国はどのように米国野球とかかわってきたのか;各国の反応 ほか)
第4章 ファンは外国人をどのように受け入れているのか(人種差別の時代;マグワイアとソーサ ほか)
第5章 メジャーリーグはいかにして国内をまとめてきたか(メジャーリーグはいかにしてマイナーリーグをまとめたか;最初の“マイナーリーグ” ほか)

著者等紹介

谷口輝世子[タニグチキヨコ]
1994年京都教育大学教育学部体育学科を卒業し、デイリースポーツ社に入社。ロッテ、巨人担当を経て、98年より同社の契約社員として米国に在住し、主にメジャーリーグを取材。01年よりフリーランスとして活動
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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金吾

24
執筆されたときから20年以上が経ち、メジャーリーグの海外との関連の拡大は加速化しているように感じます。一番大きいのは経済規模の差が拡大し、メジャーリーグの収入が他の地域で野球やる時の収入を圧倒していることだろうなと思いました。2025/02/09

Az.yamada

0
2004年に出された本という事でタイムラグはある。 そのタイムラグというのは当時の選手名というだけで アメリカ以外の国とメジャーリーグとの関係性はこの10年で特に変わっていないように思う。 アメリカ以外では中南米からの選手供給が主だし、この05〜17で驚くほど活躍した(タイトルホルダー)残念ながら日本人メジャーリーガーはいない。 しかし日本人投手陣は各チームを支える役割を果たしているのも間違いない。 この10年で一番変化したのは単年で20億もの契約が出来るようになった事かもしれない。 2017/08/15

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