江戸・東京の被差別部落の歴史―弾左衛門と被差別民衆

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  • サイズ B6判/ページ数 241p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750318103
  • NDC分類 361.86
  • Cコード C0021

出版社内容情報

江戸の町の長吏(ちょうり・被差別民)の頂点にたった弾左衛門。江戸開府から明治維新にいたるまで、彼の支配の構造と系譜をたどり、江戸の被差別部落の暮らしとその解放への取り組みをつぶさにかたる。資料に「弾左衛門文書」等当時の貴重な文書を付す。

まえがきにかえて

第一章 弾左衛門のはじまり
一 徳川氏の江戸入府とともに始まった弾左衛門の歴史
二 弾左衛門とは何者か

第二章 弾左衛門体制の確立にむけて
一 「享保非人出入」のはじまり
二 弾左衛門体制確立に向けた重要事件
三 「享保非人出入」の決着
四 弾左衛門の「栄光と憂鬱」

第三章 被差別民の町、浅草新町
一 上野の花見
二 浅草新町の歴史
三 浅草新町の様子
四 新町の住民――長吏
五 新町の住民――猿飼

第四章 江戸の非人たち
一 近世都市江戸と非人たち
二 浅草非人頭車善七
三 非人の生活
四 非人と町人
五 松平定信と「無宿・野非人」

第五章 大道芸を生業とした乞胸と願人
一 かなり「ユニーク」な乞胸という存在
二 天保の改革と乞胸
三 願人という存在から考える、近世という時代

第六章 弾左衛門体制――支配と自治の体制
一 長くは続かなかった「最盛期」
二 江戸の都市政策に深くかかわった弾左衛門
三 武州鼻緒騒動と弾左衛門体制

第七章 自主的解放を求めて
一 「身分引上げ」求めて活動した弾左衛門
二 新

 江戸時代の被差別民というと、皆さんはどんなイメージをお持ちだろうか。「厳しく差別され、人のいやがるような仕事を押し付けられていた」、あるいは「社会外の存在として、一般の農民や町人たちから排除されていた」といったものだろうか、それとも「芸能や皮革の製造など、中世以来の技能を継承した職能集団」だろうか。
 また同時代、関東・江戸の被差別民の社会には弾左衛門という支配者がいたのだが、この制度についてはどうだろう。ちなみに少し前までは「被差別民の専制的支配者」とか、「幕府の下で農民や町人管理の一翼を担った。幕府はこのことを通じて民衆間の分断を図った」といった説明が有力だった。しかし本当にそういった説明で、弾左衛門制度のすべてが言い表せるのだろうか。
 本書がこれから皆さんと一緒に見ていくのは、まさにこうした疑問渦巻く近世都市江戸の被差別民社会である。
 近世の江戸には、弾左衛門を中心にした被差別民の社会が形成されていた。それは、弾左衛門や非人頭たちを支配者とし、長吏・非人・猿飼・乞胸といった個性的被差別民によって形成された一種の自治空間だった。もちろん、江戸の町では被差別民だけがこうした独自の社会を持っていたし仮に、被差別民の社会を欠いたものとして都市江戸を想定するとして、はたしてそれで江戸は成立しただろうか」。
 本書では、こういう疑問について皆さんと一緒に考えてみたいと思う。
 まず、江戸の被差別民の社会と、その骨格をなす弾左衛門支配が、どのように形成されていったかを見てみようと思う。
 少なくとも戦国末期の関東には、後の弾左衛門に匹敵するような「唯一の支配者」はいなかった。どうして江戸時代に入ると弾左衛門体制という形でそれが成立するのだろうか、またその成立までの過程はどのようなものか、あるとき突然幕府によって作られた「身分支配のための道具」だったのだろうか、さらに弾左衛門自身はこの体制の確立にどのような役割を果たしたのか、こういうことを考えてみたい。
 次に、確立した弾左衛門体制のもとで、江戸の被差別民がどんな生活をしたか、その実像を探ってみようと思う。被差別民の町「浅草新町」の成り立ちや、そこに暮らした長吏・猿飼たちのこと、また江戸のほとんどの町に住んでいた非人たちの暮らしと役割、そして芸能の民である乞胸・願人のことを調べてみようと思う。彼ら彼女らの仕事や生み出した製品、技術、そして芸能はどんなも 著者

内容説明

江戸時代の被差別民というと、どんなイメージをお持ちだろうか。「厳しく差別され、人のいやがるような仕事を押し付けられていた」、あるいは「社会外の存在として、一般の農民や町人たちから排除されていた」といったものだろうか、それとも「芸能や皮革の製造など、中世以来の技能を継承した職能集団」だろうか。また同時代、関東・江戸の被差別民の社会には弾左衛門という支配者がいたのだが、この制度についてはどうだろう。ちなみに少し前までは「被差別民の専制的支配者」とか、「幕府の下で農民や町人管理の一翼を担った。幕府はこのことを通じて民衆間の分断を図った」といった説明が有力だった。しかし本当にそういった説明で、弾左衛門制度のすべてが言い表せるのだろうか。本書が見ていくのは、まさにこうした疑問渦巻く近世都市江戸の被差別民社会である。

目次

第1章 弾左衛門のはじまり
第2章 弾左衛門体制の確立にむけて
第3章 被差別民の町、浅草新町
第4章 江戸の非人たち
第5章 大道芸を生業とした乞胸と願人
第6章 弾左衛門体制―支配と自治の体制
第7章 自主的解放を求めて

著者等紹介

浦本誉至史[ウラモトヨシフミ]
1965年兵庫県生まれ、1984年から東京都に在住。1989年に部落解放同盟東京都連合会に就職、現在に至る
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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あさつゆ

1
江戸の町に、被差別民衆がなくてはならない役割を果たしていたということ、だからこそ、被差別民衆は、なくてはならない存在として、認められていたということ、また、長吏、非人、猿飼、乞胸といった被差別民衆は、ただ差別されるみじめな存在であったわけではなく、差別からの解放を願い求めながら、現実社会の中で、生き生きと頑張って働いて生きてきたんだということがわかった。弾左衛門の支配は、被差別民の信頼に支えられていたこと、被差別民衆の自治を司るものとしても機能していたことが分かった。被差別民の社会の豊かさを感じる本。2013/08/09

アラリンリン

1
知らなかったことばかり。やぁ、言い方が適切かどうかわからないけど、とても面白かった!弾左衛門制度って、江戸の町の大きな、ある意味民主的な制度だったんじゃないですか? どうして時代小説や映画できちんと大きく取り上げないの?かなり面白い物ができると思いますよ!2012/05/05

So Honda

0
弾左衛門の組織が関東一円の被差別民の自治組織として機能し、身分差別はあったが江戸のインフラを担う不可欠な存在だったこと、幕末には外人技師を招き皮革産業の近代化を目指したことなど、実像が鮮やかに。あらためて明治時代の身分解放が名ばかりで、専有していた仕事を奪ったことでかえって困窮を生み出し差別を固定化したことを実感2025/01/24

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