出版社内容情報
日常生活の身近なことから人権問題についてやさしく語りかけます。また、小さいときから人権感覚を育んでいくことの大切さ、一人ひとりが他人を思いやる心を大事にすること、学校や家庭、地域社会、みんなでの取り組みの大切さを説きます。
1 人権の樹を育てる
早くから、考える機会を
大人の世界への警鐘
人に優しい社会と複眼思考
パワーハラスメントのガス抜き役
明日はあなたも少数派
子どもに伝播するゆがみ
大人の自信を持った対応
環境社会が生んだゆがみ
尊敬心と相互信頼
多民族国家への産声
差別から生まれる差別
自立する生き方
突然の侵害
他人に守られていることを実感する日
避けたい、不快な呼称
差別をつくる健常者
嫌がる言葉
偏見が生む地名変更
素通りしている差別空間
差別問題への挑戦
八〇年ぶりに差別のことを話し出した
今、命の尊さを考える
二つの心の葛藤
生まれながらにして人間なんや
個人と集団の区別の付かない人が差別を生み出す
人権意識をはぐくむ
幼児の人権感覚
2 「醜いアヒル」考
なぜ差別が?
生かされない異文化体験
異質を排除する
二つの文化を持つと……
マージナルマン
複眼思考
3 地域から発する人権
健やかな心
芽生え始めた問題意識
夢の広場を求めて
心の扉を開ける
いじめ
自分のことばをもって人権の語り部になってみたい、「一人の人間を原点」にして人権が語れれば、かならず感性にひびくにちがいない、という長年の夢がこのような形で実を結んだ。
人間とは何かを考えたことのない人に、「人権」がわかるとすればその方がおかしい。人権とはヒューマンライツ(人間の権利)の訳語であり、人間の権利を縮めたものであるからだと絵解きすると、ほとんどの人がうなずく。が、人間としての権利を持ちたくないと言う人はいないはずなのに、自分や他人の人権を傷つけてしまう社会現象が後を絶たない。
一九九〇年代半ばであった。静岡県磐田市の某中学校教員が差別発言をして問題になり、地元市民の要望に応えて当時の磐田市長が「広報いわた」に八〇〇字の人権コラムを設けることにした。そしてわたしに原稿依頼が寄せられた。地方自治体の広報に人権コラムが生まれたのも珍しいことだが、外国人であるわたしを筆者に選んだことはさらに珍しい。市側にも担当するわたしにも勇気が必要であった。当初一年の約束であったが、人権コラムはたいへん好評であったので年を重ねて五年間一人で書き続けた。一つバランスを失うと〈広報にふさわしくない〉という一言で責任
目次
1 人権の樹を育てる(早くから、考える機会を;大人の世界への警鐘 ほか)
2 「醜いアヒル」考(なぜ差別が?;生かされない異文化体験 ほか)
3 地域から発する人権(健やかな心;芽生え始めた問題意識 ほか)
4 ヨーロッパ人権の旅(民族・人種を超えて;パリであった日本人女子学生 ほか)
著者等紹介
金両基[キムヤンキ]
早稲田大学文学部卒。哲学博士。静岡県立大学教授を経て、現在、常葉学園大学教授。評論家。専攻・比較民俗学、比較文化、東洋演劇、人権文化論。号=白翔。昭和54年度芸術祭優秀賞受賞(1979年)。ラジオたんぱ第一回アジア賞受賞(1984年)。韓国放送公社第3回KBS海外同胞賞特別賞受賞(1995年)。韓国政府から文化勲章受賞(2002年)。1998年から現在まで4期、韓国大統領より民族平和統一諮問会議委員に委嘱される。マスメディアや講演会で人権問題、歴史認識、社会問題、国際問題などを書き、語る。静岡人権フォーラム代表世話人。静岡県人権会議委員
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