レイプの政治学―レイプ神話と「性=人格原則」

レイプの政治学―レイプ神話と「性=人格原則」

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  • サイズ B6判/ページ数 296p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750317359
  • NDC分類 368.6
  • Cコード C0036

出版社内容情報

「レイプは性的欲望から起こるのではない」という新たなレイプ「神話」の誤りを明らかにし、日本を代表するフェミニスト上野千鶴子のセクシュアリティ論を詳細に検討し真っ向から批判する。

まえがき

1 レイプの神話学
第1章 くつがえされたレイプ神話と新たなレイプ神話
第2章 レイプと性的欲望
 第1節 ウェストの「男性性の代償行為」論
 第2節 ウェストが言及した諸研究
 第3節 アミルのサブカルチャー論とマッケラーの著書
 第4節 グロスの「アンガーレイプ」「パワーレイプ」論
 第5節 セクシャル・ハラスメント、近親強姦、子どもに対する性的虐待
 付 論 八〇年代後半以降のレイプ論

2 レイプと「性=人格原則」
第3章 性の自由と「性=人格原則」
 第1節 性の自由と性暴力
 第2節 性的な自己決定権
 第3節 性的自己決定権の制約原理としての女性の平等権
第4章 反「性=人格」論批判
 第1節 上野千鶴子氏の反「性=人格」論
 第2節 性暴力と親密性の価値
 第3節 買売春と性的烙印
 第4節 強姦被害の問題


文献一覧
索引

 二五年前、結婚して、札幌市の郊外にあるアパートに住むようになった。付近には住宅は少なく、細々と営業をつづける工場がいくつか立っていた。道は工場に沿って延びており、人通りは少なく、バス停までの四〇〇メートルの間は街灯が二、三あるだけだった。そんなアパートにつれあいの友人が、まだ幼い子どもをつれて遊びに来たことがあった。ひとしきり遊んだ後、夜、帰り際、その友人が、あたかも私に聞かせまいとするかのように小声で、つれあいに話している内容を耳にしたときの驚きを、私は忘れることができない。
 「私は小さい子どもがいるから襲われないけど、○○ちゃんは一人だから危ない。見送りはいらない」というのが話の内容だった。その時、私がどういう対応をしたのかは記憶にない。しかし私はそれ以来、この話が頭を離れなくなった。男性ならほとんど思ってもみないことに、女性たちは常日頃気をかけて生きなければならないという現実があること、一方、そうやって女性たちを襲い、脅かすのは、私と同じ性に属する男性であるということ――そのふたつの事実が、それ以来、私の心にずっとわだかまってきた。
 私は一九九九年に、ポルノ・買売春が構成する男性のセクシュアリ護するための原理でもあることを詳しく論じた。また女性の平等権を、自己決定権に対する規定原理・制約原理として論じてもいる。その関連で、「性=人格原則」に対する、もっとも顕著な敵対者である上野千鶴子氏(氏は、小倉千加子氏とともに上記の新たなレイプ神話を広めた当事者でもある)のセクシュアリティ論を詳細に検討し、批判する作業を行った。
 著者は男性である。しかし、男性が女性の論客に対する「もぐらたたき」のためにこの本を出したといった安直な評価だけはしないでいただきたいと、切に望む。本文にも記したように、上野千鶴子氏が代表的なフェミニストと目されているだけに、氏によってバックラッシュとしか言いようがない議論が展開されている事実を、プロ(親)・フェミニスト男性である私は、座視することができなかったのである。問題は、氏が「レイプは性的欲望から起こるのではない」という、根拠がないばかりか、非常に危険な神話に、何ら満足な検討も加えることなしに組し、それを確実な真理であるかのように語ってこれを広めたこと、また上野氏がレイプ被害や性的烙印の問題について、「性と人格とを切り離す」という無意味な論理で問題をそらしつづけたのみか、上記

内容説明

本書は、前半で、レイプについて言われてきた「神話」を検討。その中でも、「レイプは性的欲望から起こるのではない」という新たな神話の誤りを明らかにすることに、多くのページを費やしている。後半では、レイプはもちろん、セックスの強制、しばしば女性に加えられる性的な烙印その他に抗するための「性=人格原則」について論じた。

目次

1 レイプの神話学(くつがえされたレイプ神話と新たなレイプ神話;レイプと性的欲望(ウェストの「男性性の代償行為」論;ウェストが言及した諸研究;アミルのサブカルチャー論とマッケラーの著書 ほか))
2 レイプと「性=人格原則」(性の自由と「性=人格原則」(性の自由と性暴力;性的な自己決定権;性的自己決定権の制約原理としての女性の平等権)
反「性=人格」論批判(上野千鶴子氏の反「性=人格」論;性暴力と親密性の価値;買売春と性的烙印 ほか))

著者等紹介

杉田聡[スギタサトシ]
1953年生まれ。帯広畜産大学教授。哲学専攻
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

油小路ぽんぽこ

1
性暴力の問題を男性が論じることの困難さの一つが、唾棄すべき加害性が己の中にもあるという事実に向き合わねばならないことだと思う。現に杉田氏も自らの加害性の存在を率直に告白している。これこそが、加害発生の因に直接迫る方法であり、真に効果的な加害抑制の仕組みを講ずることを可能にするのではないかと思う。2021/06/09

宵子

0
ここでいう神話というのは、男(というか世間か?)の都合のいい原則・お話である。 つまり性犯罪は全部女(というか被害者)が悪いと思われるのは何故かというのを綿密に調べたものを客観的に淡々と書いている。淡々と書いていて怖いくらい。 性犯罪にかかわらず、強いもの・叩くと自分が被害を被る可能性あることを擁護し、弱いもの自分が被害を被らない上に、世間が後押ししてくれるものを叩く乗って、意思がない大衆・無関心な人々なら、無意識にやってしまうことなのかな。2012/01/22

中本 雄大

0
レイプに関する様々な研究を熟読し、考察して書いたと文章から感じ取ることができ、丁寧に書かれてるとおもった。 様々なレイプに関する神話(=逸話)を否定し、そこから新たなレイプに対する価値観を見出し、より正確な発生起序を探り出そうとしてるように感じた。 多くのページをレイプの「脱性化」の否定するための証拠を列挙している。 レイプの「脱性化」はレイピストを異常者とし、被害者が自責を念を持つ事を抑制できる。 確かに、「脱性化」が社会に普及すればレイピストの届出率は増加するかもしれない。 それは、レ2006/10/02

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