内容説明
時代を超えて脈々と流れつづけるロシア・メシアニズム。その系譜を跡づけ、ロシア精神の特質を検証する。
目次
第1章 正教世界の後見人=ロシア―ギリシャ正教への帰依
第2章 西欧文明の一次的借用―ピョートル大帝の改革
第3章 後れたロシアの「後発の利益」―劇作家フォンヴィージン
第4章 ヨーロッパの魂も救うロシア―スラヴ派の先駆者オドエフスキイ公爵
第5章 ロシアの歴史は過去も未来も無か―「狂人」チャアダーエフ
第6章 ロシアなくしてヨーロッパに平和なし―詩人・外交官チュッチェフ
第7章 西欧の欠陥を補うロシアの原理―スラヴ派イワン・キレエフスキイ
第8章 身を清め、しかるのちに聖戦の剣を取れ―スラヴ派ホミャコフ
第9章 聖戦の遂行こそロシアの存在意義―アクサーコフ家の長女ヴェーラ
第10章 スラヴ連邦の盟主=ロシア―元モスクワ大学教授ポゴージン
第11章 なぜヨーロッパはロシアを憎むのか―汎スラブ主義者ダニレフスキイ
第12章 ロシアの聖なる使命を完遂せよ―「スラヴ慈善協会会長」イワン・アクサーコフ
第13章 コンスタンチノープルを領有せよ―『作家の日記』の著者ドストエフスキイ
第14章 ロシアの国民は選民か―まとめ・二十世紀初頭
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
brzbb
2
ドストエフスキーが『作家の日記』で書いているとち狂ってるとしか思えない政治評論にびっくりして調べてるうちに見つけた本。元の本はちょうどソ連崩壊のタイミング(1989年)で出版されている。18世紀から20世紀初頭まで、列伝のかたちで1章ごとに思想家たちを紹介していく。ドストエフスキーと『作家の日記』にも1章さかれている。これを読んでドストエフスキーの強硬な主戦論やロシア正教による人類の救済という独特な主張の中に、ロシア思想史に脈々と流れるメシアニズムと選民思想が流れ込んでいるのがよくわかった。2023/02/08
tkm66
1
頑張って、の斜め読みだったとの覚え。2004/06/23
工藤 杳
1
思想史というよりはロシアのメシアニズムまとめ。 後半はもう、わかったわかった…という感じで、狂信的なロシアの論理はずっと繰り返されてきたことが分かりすぎるほどわかる。 多少なりとも批判的な目を向けるのが最終章のトルベツコーイだけというのも寂しい話だが、そんなもんなんだろうか。2016/12/22
涌
1
1989年に出た本。中世から18世紀までの、当時の知識人の書簡や日記、ソ連時代の研究者の文を元にしてる。近世以降の章は似たり寄ったりで、最後は飛ばし読み。革命時代には触れていず。この本がどんだけバイアスかかってるのかがよう分からないが、正教メシアニズムという柱に沿って収集されてるため、「無私無欲だ」とか「聖戦」とか「スラブの解放」とかって自意識、印象としてはロシア人の未熟なヒーロー妄想というか、「メシアニズムってそういうもんだろ」と言われたら、そうだ2013/07/31