出版社内容情報
他者を演じることの持つ力、とりわけ、他者の立場に立つために演じることによる変容を見つめる。俳優としての経験を持つ著者が、役作りの過程で起こる変容は他分野に活かせると実感し、「他者をなぞるように演じる」方法を開発。この手法を授業や日常生活、さらに地域の活動において用いるようになった学生と、その周りの人々の変容の過程をたどる。「相手の立場に立ったつもりになる」のと「立つ」ことの違い、頭で考えるのと実際に身を置いて感じることとはどのように異なるのか。
身体をもって他者をなぞり演じることで、自他の「間(ハザマ)」に立ち、省察を経て自分の主観的なモノの見方の枠組みが変容していくという実践原理を解明し、現代社会の無関心、無理解、対立、差別が問題となる場面への応用可能性を示す。
内容説明
相手の立場に立っている「つもり」を越える実践。「自分」から「相手」に一挙に飛ぶことはできない。他者の身体をなぞることで他者の力をかりて「自由」になる。現代社会の無関心、無理解、対立、差別が問題になる場面への応用可能性を示す。
目次
第1部 「他者をなぞるように演じる」手法―俳優の演技術の応用による省察と変容(俳優の役作りにおける自己相対化;演劇的手法を用いた授業実践―フィールドワーク・ボランティア活動での省察と変容)
第2部 日常生活からコミュニティへの応用―他者の捉え方・態度の変容と広がり(日常生活への応用―「近しい人」「遠い人」に対する態度の変容;他者の生をそのまま受け止め現す―語り手‐演じ手‐観客の間に起きる作用;コミュニティにおける住民と場の変容―まちづくり・ボランティア学への応用)
他者をそのまま受け止める
著者等紹介
石野由香里[イシノユカリ]
修士課程で人類学を専攻し、クック諸島でフィールドワークをおこなう。地域振興の仕事に携わったのち、東京工業大学社会理工学研究科社会工学専攻(ノンプロフィット・マネージメントコース)博士後期課程に入学し、まちづくりについて学ぶ。その後、論文提出により博士号を取得(教育学)。法政大学多摩ボランティアセンター・コーディネーター、早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター・常勤講師を経て、明星大学明星教育センター・特任准教授。専門は演劇教育・人類学・社会貢献。一方で、10代より俳優として舞台や実験映画等で活動。近年は音楽家と共に新たな舞台表現を探求している。演劇ワークショップのファシリテーターとしても活動中。論文に「演劇的手法を用いたボランティア活動の省察と変容的学習に関する研究―アクティブ・ラーニング、サービス・ラーニング等への適用に向けて」(アレックディクソン賞受賞/『ボランティア学習研究第16号』2015年)、「演じる行為が自己相対化と他者理解を促す効果―問題発見型フィールドワークで遭遇したシーンを再現する手法の開発」(日本生活学会研究論文賞受賞/『生活学論叢27号』2015年)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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