内容説明
アラビア語をめぐる社会状況を詳述しながらアラブ文化・中東イスラーム世界の深淵に迫る。
目次
第1章 カイロの日本人留学生―アラビア語が通じない!
第2章 シナイ半島の遊牧民―山の民ジバーリ部族
第3章 アラビアンナイト―中東と西欧の合わせ鏡
第4章 ベリーダンス―音文化をめぐって
第5章 沙漠のシャイロック―アラブ社会の異人観
第6章 言語と文化はどうかかわるのか?―新しい視点を求めて
著者等紹介
西尾哲夫[ニシオテツオ]
1958年香川県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士。国立民族学博物館民族社会研究部教授、総合研究大学院大学文化科学研究科教授。専攻は言語学・アラブ研究。アラブ遊牧民の言語文化に関する言語人類学的研究や、アラビアンナイトをめぐる比較文明学的研究に従事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shizuca
8
語り口が好みです。大学にいたら絶対に講義とってる内容で、他の論文も読みたくなりました。読んでいてつくづく日本の研究者をとりまく環境(資金面や発表の場や閉鎖的空間)は良いとは言えないと思いました。実際に現地で人を相手に研究を進めるのは楽しいだけじゃなく、辛いことや憤ることも多々あると思うけれど、西尾先生はそれでも現地に行って人と人との結び付きや偶然が重なって自分の研究ややりたいことを見つけていて、ただただすごい。そして貴重な資料が戦争や内乱で現在どうなっているのかわからない状況なのがとても辛い。2015/09/26
Maya Zuckerman
0
フィールドワークをするからこそわかる現地の空気や著者の学問への信念と情熱を感じることができる一冊。既存の学問の潮流から離れ、言語表現と文化とのつながりを探る”謎”への旅にとても魅力を感じる。2016/01/14
taka
0
フィールドワークを得意とするアラビア語の言語学者によるエッセイ。日本のアラブに対する評価においてはしばしば西欧的なまなざしが内面化されるといった事例への言及もあり、言語と文化を一緒くたに論じるのがいかに容易でないかということを痛感した。そして第6章を読むと20世紀の言語学の大まかな流れが概観できるようになっている。 上り、下りなどの民族方位はシナイ半島のアーンミーヤ(フスハーではない土着の方言)にも存在し、そのような分野の研究にはまさにフィールドワークの手法が活きてくるのだろう。 2020/11/21