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ナルツィスとゴルトムント
牧歌(庭でのひととき;身体の麻痺した少年―少年時代の思い出)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
訪問者
5
「ナルツィスとゴルトムント」であるが、昔の高橋健二訳では「知と愛」というタイトルだった。むろん、「ペーター・カーメンツィント」で十分であり、こういう日本語タイトルには昔から批判もあったが、かっての洋画の日本語タイトルと同じく、これも昔の古き良き翻訳文化だったのかもしれない。少なくとも、本書を読み終えた後は、タイトルは「知と愛」でいいんじゃないと納得するものがある。いずれにしても、まだ「ガラス玉遊戯」を残しているとはいえ、本書は小説としての完成度の高さやストーリーの面白さも含めて、ヘッセの最高傑作だろう。2019/01/25
菊地
1
ナルツィスとゴルトムントを読みました。ヘッセが何だか魅力を感じなくなってきた……ちょっと病的な作風が多いような。この時期のは。前は郷愁やクヌルプ、デミアンに燃えるような感動を抱いたものだけど、ヘッセの魔力は若いときにしか通用しないのかもしれない。でも、ヘッセの魅力はまだ口を開けて説明し、太鼓判を押すことができる。この作品でも、寂しげな作風はまだ生きている。ヘッセは自然描写が美しく、濡れている月や草花をイメージさせる。雨後の月や野原などを。さっぱりしていて、静か。霧のかかった湖のような静けさと美しさ。2012/05/18