内容説明
千年以上続いた首都の座を奪われるに至り、旧来の様々な特権や身分制度の崩壊してゆく京都。時代の転換期に立つ人々の姿を通して維新期の京都の実像に迫る。
目次
序章 禁門の変とどんどん焼け
第1章 幕末の政変と公家社会(京都の尊王攘夷運動;王政復古と東京遷都;ある地下官人の明治維新)
第2章 近代化をめぐる葛藤(京都博覧会の意義;官家士族の救済;保勝会と文化財保護)
第3章 「京都」の再構築(疏水と博覧会;京都の統合と歴史の編纂)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
田中峰和
5
どんどん焼けで灰燼に帰したこともあり、天皇を京都から移す計画は早くからあった。幕末の京都は、攘夷に狂う志士たちが洋学やキリスト教を受け入れる開明派を殺害する危険な都市でもあった。その影響もあったのか、大久保のように大阪遷都を計画したものもあったが、三条実美たちの東京遷都に決定した。千年の都も一転して一地方都市へと転落した京都。薩長が権力を掌握する中、天皇を担ぎ上げ地位を得ようとした公家たちは弱体化された。都を東京に奪われた京都は、都市としての復活を企図し、疎水の大規模工事と博覧会などにまい進した。2021/04/13
わ!
2
このまま「京都市史」にでも掲載されそうな書かれ方のように思えます。著者は京都歴史資料館の職員さんであり、市井の研究家さんである。文章の中に随分古い漢字の使い方が見られるから、御年配の方だと思っていたのだが、著者の履歴を読むと1961年生まれと分かり、私より少し年上という年齢差にびっくりしました。さらにこの本は1998年に書かれているので、著者が30歳半ばの時に記したと言うことになリますね。明治維新により東京へ遷都京都の落日が丁寧に書かれています。この本を読んだ後、平安神宮を見ると感慨深いものがありますね。2022/05/06
人生ゴルディアス
0
内容はタイトルの通り。だが特に公家に固執せず、京都の幕末から明治にかけての文化的な変遷が記されている。面白かったのは、廃仏毀釈で寺はひどい目にあったが神社は国教となって云々という寺関係者の著書がある一方、むしろ困窮したのは檀家をもたない神社のほうであった、などなど。特に、神社は尊攘に深く関わっていたにも関わらず、という側面がある。維新によって取り残される者たちが多くいたが、それこそ京都は旧習の塊だった。その反動か、開明にも積極的に取り組んだが、それが余計に摩擦を生んだのも確かなことだっただろう。2013/04/18