出版社内容情報
お城のお堀にアリゲーターガーという巨大魚がいるらしい。捨てられ、怖がられ、でもどこにも行く場所のない外来魚のガー。その孤独に引き寄せられるように夜の堀にやって来た3人の若者が出会う。母の信仰が原因でクラスに馴染めず不登校になった航、弟の交通事故死に責任を感じ自分を責め続けている朔哉、高校卒業直前に祖母が急死し天涯孤独になった葉月。ガーはなぜか3人の前にだけ姿を現し、静かに話を聞いてくれる。それぞれの過酷な現実につぶされかけていた3人が、孤独に向き合いながら歩みはじめるまでを描く青春小説。
内容説明
ゴールデンウィークが終わって数日たったある晩。見覚えのある横顔を見かけ何の気なしについて行った朔哉は、小学校のクラスメイトだった航に再会する。航はお堀に住む巨大な外来魚アリゲーターガーに会いに来ていた。町の片隅で、行き場のない3人と1匹が出会った―。孤独の向こうに見えてくる月の光のような物語。
著者等紹介
山本悦子[ヤマモトエツコ]
愛知県半田市生まれ。小学校教師のかたわら執筆を始め1996年に作家デビュー。『神隠しの教室』で第55回野間児童文芸賞受賞、『先生、しゅくだいわすれました』でホワイトレイブンス2016選定、『マスク越しのおはよう』で第63回日本児童文学者協会賞受賞。日本児童文学者協会会員。「ももたろう」同人。2019年より新美南吉童話賞選考委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
れっつ
33
とてもよかった!惹かれたこの切なげなタイトルも、読後には静かな希望を感じた。自分の境遇に孤独や悩みを抱える3人のティーンズたち。城の堀で何処にも行けずひっそりと暮らす大型外来魚・アリゲーターガーに自身を重ね、夜な夜なガーに話を聞いてもらうことでどうにか生き延びていた。そしてある時3人は、知り合いの年配男性に手伝ってもらって、ガー救出作戦に乗り出すが…。最初はガーと1対1だった対面も、3人が互いに話すようになってから、それぞれが段々自分の生きる道を前向きに捉えられるようになっていく展開が胸熱!おすすめ良書!2025/05/20
nyanco
23
タイトルが気になって読みました、山本悦子さん初読です。 捨てられ、行く場所のない外来魚・アリゲーターガーに引き寄せられるように、居場所のなさを感じている若者3人を出会わせる。 母の信仰が原因で不登校になった航、弟の交通事故死に責任を感じ自分を責め続ける朔哉、高校卒業直前に祖母が急死し天涯孤独になった葉月。 3人それぞれが背負っている苦しみについての描き方も巧いです。 →続 2025/04/19
anne@灯れ松明の火
21
読友さんご紹介で、気になっていたところ、新着棚で。名古屋城のお堀にアリゲーターガーという巨大魚がいるらしい。外来魚として問題視されているその魚をガーと呼び、夜の闇の中、やってくる3人の若者たち。彼らには共通した匂いがある。それは孤独……。ひとりぼっちのガーと、いつしか心を通わせる3人。捕獲されそうになるガーを助けようとする3人(手伝う大人1人) 切なすぎる境遇の若者たちがガーと出会い、考え、動くことで、変わっていく。読後は、月を見上げたくなる。ゴトーヒナコさんの絵もいい。山本さん、初読みかも? 2025/06/26
りらこ
17
「外来種」とは、どうやってきたのか、どうやって根付いていったのか。そこに人間の関与、勝手な行動、無責任さなどが存在することを知り、子どもたちは怒る。また外来種というのはどの時代からの区分を言うのか、も疑問に持つと面白いと思うらしい。そんな子どもたちとのやりとりを思い出しながら、ひんやりとした空気を感じつつ月あかりの下で読んでいるような気持ちになる本だ。人間のエゴによってそこに存在させられてしまっているアリゲーターガーと、自分ではどうしようもなかった環境によって追い込まれた孤独に身を置く人たち。良い本。 2025/06/29
雪丸 風人
17
さみしさと手をつないで進んだっていいじゃないか!物語からそんな想いが伝わってきました。心を優しく包んでくれる物語。さみしさに溺れそうな3人の若者が、お堀で出会った異形の外来魚“ガー”に自分を重ね、誰かを投影して、思い入れと絆を深めていきます。重すぎる過去、すれ違う家族、そして大切な人との別れ。それぞれの抱える闇の奥深さに胸を衝かれ、一気に引き込まれました。彼らを見守る例の御仁も魅力の塊。ビックリするような行動の理由がまぶしくて、差し伸べる手も温かくて大ファンになりましたよ。(対象年齢は12歳以上かな?)2025/05/22