出版社内容情報
記憶喪失の猫、ヨゴロウザがいきついたのは猫たちが住むナナツカマツカの丘。あまたの敵から身を守るべく、群れない猫をまとめる理想に向かう片目に出会う。そこから猫たちの骨太な叙事詩が始まった。名作長編・三分冊の上巻。
内容説明
おれはヨゴロウザ。二本足のいうところの記憶喪失らしい。(おれの知っている世界はどこにいったんだ…。)これがすべての始まりだった。―うたえ、猫たちの叙事詩を。
著者等紹介
上野瞭[ウエノリョウ]
1928年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。同志社女子大学教授。児童文学者。評論『戦後児童文学論』を出版して注目されたのち、長編創作『ちょんまげ手まり歌』を出版。以後『わたしの児童文学ノート』など児童文学評論集をつぎつぎと執筆。同志社女子大学では児童文化を担当。創作に『ひげよ、さらば』(第23回日本児童文学者協会賞)『さらば、おやじどの』『日本宝島』、大人向け長編小説『砂の上のロビンソン』(1989年映画化)『アリスの穴の中で』など。エッセイ集に『ただいま故障中』ほかがある。2002年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アマニョッキ
32
舞台の前におさらいとして。子供の頃も面白かった記憶だけはあるが、本当に面白くてあっという間に読み終わってしまった。めちゃくちゃいい所で終わったのに中巻がまだ手元に届いてないぐすん。児童文学だけどどうして深い。ヨゴロウザの名前だけ二本足がつけた感あるし、記憶喪失の謎も気になるところ。わたしのまわりはみんな苦戦してるの何でだろ?って思ってたけどちょっと翻訳ものぽいからか?2023/09/01
あじ
27
「ネコヅメのよる」「なまえのないねこ」の町田尚子さんのイラストで甦った、80年代児童書の名作。一時記憶を失った猫のヨゴロウザを主役に、ネコ、イヌ、ネズミの縄張り争いを個々の主張と心理戦で描く。上巻の後、中巻、下巻とたっぷりとした容量で物語は続く。ヨゴロウザはどこから流れてきたのか、度量はあるのか、ユニークなネーミングの仲間たちと追っかけていきたい。2023/05/03
ベル@bell-zou
25
片目の相棒として手助けしているつもりがナナツカマツカの猫達のリーダーに仕立てられてしまったヨゴロウザ。野良犬たちの縄張りアカゲラフセゴへ潜入することになるが…。ヨゴロウザが記憶喪失を自覚するところから始まる謎めいた物語は勝手気まま嘘や疑いとで互いに心許し合えない猫模様。主人公ヨゴロウザはブレまくりだし兄貴分の片目はどこか信用できない。ちっともワクワクしないのにページを捲る手は止まらない不思議。どことなくどんよりとした気持ちで中巻へ。2023/10/18
はっぱ
20
児童書。記憶喪失の猫、ヨゴロウザ。ヨゴロウザが気が付いた所は、ナナツカマツカと言う丘だった。そしてヨゴロウザは「片目」と言う猫に合う。「片目」の相棒として暮らすうちに、若かったヨゴロウザも丘の暮らしとその丘に暮らす様々な猫達に馴染んでいく。不本意ながらも、ナナツカマツカのリーダーとなったヨゴロウザ。続きが気になる劇的な終わり方だった。片目の事を疑わしく思っていたけど、片目の取った行動には感動した。2023/08/08
イシグロ
10
1982年出版。自分はNHKの人形劇をリアルタイムで知る世代で、原作が小説であることも知っていたのだけれど、780ページという圧倒的ボリュームに尻込みして当時は手を出せなかった記憶がある。その『ひげよ、さらば』が昨年、三分冊の新装版として再発されていたことを知る。しかも、現代最高の猫絵師・町田尚子の装画ですと。長男も誘って共読することに。 主人公は過去の記憶を失った猫・ヨゴロウザ。彼がナナツカマツカの丘で片目の猫と出会うところから物語は始まる。個性的な猫たちが次々と現れ、不穏な空気を孕みつつ上巻は終わる。2024/08/29