内容説明
大事な人を失う、それはいったいどういうことなのでしょう。たとえ一人の死であっても家族や恋人、友人などにとってはかけがえのないひとりを失うことです。陸前高田と東京、妹・トシの死にまつわる賢治の作品が、三月十一日とひびきあう。大災害時代の死について考える。陸前高田の実家が避難所となった著者。震災後10年、伝えたいこと。
目次
1 東北で生まれ、身近な死を考える。
2 あの日のこと、そして九年後。
3 福島、道野さんのこと。
4 『銀河鉄道の夜』とわたし。
5 大切な人を失うということ。賢治とトシ。
著者等紹介
千葉望[チバノゾミ]
岩手県生まれ。早稲田大学文学部日本文学専修卒業。佛教大学大学院仏教文化専攻修士課程修了。ノンフィクション・ライターとして、人物インタビューやルポ、書評などを執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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☆よいこ
76
YA。ノンフィクション。岩手県陸前高田市の寺院を実家にもつ著者が、2011年3月11日の東日本大震災を中心に、人の「死」について語る。震災から10年たち、身近な人の死について受け止められること受け止められないことを、体験談を交えて書く。『銀河鉄道の夜』でカンパネルラを見送ったジョバンニの心情を考察し、亡くなった多くの人のこと残された人のことを思う。▽巻頭のことば「これは、私的なメメント・モリです。」▽ふりがな有りで、小学高学年から読める。震災やコロナで「死」が身近にある現代だからこそ、読んでおきたい本。2022/05/07
chimako
73
【第33回読書感想画コンクール指定図書】実家のお寺が東日本大震災の避難所となり、家族は無事だったものの親族や知人を亡くした著者が今思うことを賢治の作品を通しこれから生きる人たちにメッセージを送る。東北地方独特の地域感、経験しないとわからない悲しみや辛さ。未だ爪痕は見える場所にも、それぞれの人の心にものこされるが、10年経って他人事になりつつある者も多い。宗教の本を読んだような気持ちになる。著者はお寺に生まれ育った故の宗教感があるのだろう。さて、これは感想画の指定図書である。どんな絵が生まれるのか。2021/10/15
雨巫女。@新潮部
9
《私-図書館》宮澤賢治の詩をあらためて読み返したい。東日本大震災が、10年経つんだ。2021/01/02
Midori Matsuoka
7
東日本大震災で被災地となった岩手県陸前高田市を故郷に持ち、実家が罹災し、懐かしい郷里の風景を失い、生死と向き合い綴られた著者の思いがストレートに伝わってきた。 東日本大震災について多くの記述があると思うけれど、一つの視点として当時のつらい思いや被災者に寄り添えるもの、一方で分かち合えないもどかしさなど、たくさんの感情が丁寧に書かれている。 著者が挙げていた宮沢賢治の作品が被災地、そして被災者と重なるところもとても興味深い。改めて『銀河鉄道の夜』を読み直したくなった。 2021/09/11
玻璃
4
東日本大震災からまもなく10年を迎えるが、記憶はいまだ生々しく、癒えない心の傷から流血しているように感じられる描写もある。岩手出身であっても、あの日東京で被災した著者が、どこか当事者になれないと感じる気持ちは、少しだけわかる気がする。そのもどかしさは察するにあまりある。あの大災害を乗り越えて、なんて安易には言えない。宮澤賢治に救われたという著者。また、仏教の死生観が、著者を支えているのだろう。賢治はほとんど読んだことがなかったので、これを機に少しずつ読んでみたいと思った。2021/01/30