内容説明
新中国黎明期の天津。歴史の渦中に芽生えたほのかな想い。少女は少年への最後の願いを一輪の花に托す。透明な感性が冴える東洋の「禁じられた遊び」。
感想・レビュー
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inarix
6
日中戦争、国共内戦、朝鮮戦争の戦場となった街で生まれ育った日本人少女・麻莉。10歳にして天津へと移り住み、死におののき冷え切った少女の心は癒えていく。中国語もよくわからないまま小学校に編入した彼女を何かと助ける少年・葉飛。麻莉はいつしか葉飛といくつもの季節をすごし、大人になり、彼の漕ぐボートに乗って蓮の花びらに触れる夢を見る。しかし1953年。天津へ文化大革命の影が忍び寄り、嵐が麻莉の周囲から人々を連れ去ってゆく――。刊行時、中国版「禁じられた遊び」と銘打たれた淡い初恋物語。2014/11/02
おたきたお
0
「チャーズ2」の後の天津での中学生時代の思い出を小説として描く。日本人としての偏見、共産党入党を巡る教師の言動の変化や教師の林彪批判に対する得も言えない不安、子供が親を告発する教科書に対する違和感、それに共感する少年葉飛(イエフェイ)との心の交流を描く。文革前の天津の華やかな雰囲気と、学校での自己批判の様子(文革への序曲)等リアルな情景を醸し出す好著。主人公の人間に対する視点の鋭さ、暖かさを感じる。2006/01/01