内容説明
都会ではない「都市」、田園牧歌的自然ではない本来の「自然」に関するものが主だが、自作も含めて文学、映画作品に関する文章もある。「現実」と「意識」との関係ということも、一貫する主題と言えるかもしれない。われわれの現実も意識も、共に底深く不安にスリリングに揺れ始めている、というのが80年代の著者の基本的感触である。最新エッセイ集。
目次
廃墟のコスモロジー
私にとって都市も自然だ
都市は廃墟をはらんでいる
感性アップの時代
新しい視覚
大地なき時代の神話―J.G.バラード
意識が現実をつくる―フィリップ・K・ディック
新しい空間―ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』
タルコフスキーの“世界感覚”
冥府からの贈り物―ムンク
虚無よりの虚構―中島敦「文字禍」など
実存的冷気―坂口安吾
無にさらされて―梅崎春生『幻化』
“向う側”ということ(処女作「向う側」)
大いなる闇の流れ(短篇連作『此岸の家』)
砂漠―究極の風景〔ほか〕