出版社内容情報
大航海時代、琉球王国はシャム・フィリピン・マラッカ海峡にいたる広大な海域で交易をくり広げていた。ポルトガル人やスペイン人が残した貴重な記録や漢文史料を読み解き、東南アジア諸国との通交の様子を再現。港市としての那覇の様相や尚氏王朝の交代劇などとともに、14世紀末から200年におよぶ「海の沖縄人」たちの交易活動の盛衰を描く。
内容説明
大航海時代、琉球王国は広大な海域で交易をくり広げていた。ポルトガル史料なども用い、東南アジア諸国との通交を再現。港市那覇の様相や尚氏王朝の交代劇などともに「海の沖縄人」たちの交易活動の盛衰を描く。
目次
「海の沖縄人」の発見―プロローグ
海洋王国の船出
南海貿易の発展
王朝交替と海外貿易
尚真王期の南海貿易
ヨーロッパ人との出会い
南海貿易の変容と終焉
「万国の津梁」の二〇〇年―エピローグ
著者等紹介
中島楽章[ナカジマガクショウ]
1964年、長野県に生まれる。現在、九州大学大学院人文科学研究院准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
112
琉球は日本と中国の対東南アジア貿易で絶好の立地にあった。しかし産業のない小さな島のため、中継貿易国家しか生きる道がなかった。そのため中国と日本とは事実上の朝貢貿易で実利を得て、ジャワやマラッカ、交趾まで辞を低くして交易を求め進出した。いわば独立を守るため腰を低くしていたわけで、「万国津梁」とは自分たちは侵略の意志はない平和国家だと宣伝する謳い文句だった。しかし倭寇の跳梁や明朝の海禁、シャムの官売買などの横暴に対抗できず、中継が不要になると貿易も衰退する。貿易しか生きる道がなかった国は貿易と共に滅びたのだ。2025/08/02
MUNEKAZ
12
『歴代宝案』以外にもスペイン人やポルトガル人の遺した史料を基に、琉球王国の南海貿易を再現する。明や朝鮮への朝貢貿易、密貿易は有名だが、東南アジア各国とも盛んに交易を行っていた事実は驚き。琉球王国の南海貿易を明の朝貢体制を補う重要な「サブシステム」として捉え、東アジア海域のハブとして琉球が機能していたことは興味深い。日本中心に考えれば琉球は南の辺境だが、東アジア海域で見ればその中心に位置する要の地である。2025/06/18
アメヲトコ
11
2025年5月刊。古琉球時代の琉球王国の南海貿易=東南アジアとの貿易の実像に迫った一冊。琉球の貿易については王府の外港文書集である『歴代宝案』をもとに検討されるのが常道でしたが、本書はこれだけでなくイベリア史料なども広く活用しているのが特長です。史料が限られているためときに状況証拠的推定もなされているところもありますが、朝貢貿易の「サブシステム」として南海貿易を位置付け、国際関係をダイナミックに描いているところは刺戟的でした。2025/05/31
於千代
3
琉球王国の交易に焦点を当てた一冊。王国内に華人コミュニティがあったり、五山派の僧侶が日本への書状を書いていたりと、当時の活発な人的交流が伝わってくる。また交易に重きを置く国だけに、周辺諸国の状況変化に大きく左右されたことも知り、琉球王国への解像度が上がったと感じた。2025/07/24
Go Extreme
2
海の沖縄人の発見と再発見 万国津梁という理想 東南アジアの貿易の時代 琉球王国という港市国家 福建を結ぶ南島路 中山山南山北の三山成立 明朝への朝貢貿易開始 福建出身の久米村華人 明朝下賜の閩人三十六姓 琉球への海船下賜 国子監への官費留学 航海の女神波上天妃宮 軍事組織でもあったヒキ フィリピンへの東洋航路 明朝を巻き込んだ陳沢事件 徳川幕府の朱印船貿易 日朝貿易を断つ三浦の乱 1615年南海貿易の終焉 泉州華人海商の活躍 アユタヤとの疎遠化 薩摩藩の琉球支配2025/05/12