出版社内容情報
律令で定められた古代の女官、采女(うねめ)。地方エリート層出身の女性が「天皇に献上された美女」や遊女へとイメージが形成されていったのはなぜか。外交の一端を担い海を渡った采女や『天寿国繍帳』銘文に見える「大女郎」など、歴史書や文学作品の記述をもとに律令前史における宮廷女性の実像に迫り、従来のゆがめられた〈采女幻想〉から解き放つ。
内容説明
律令で定められた古代の女官、采女。地方エリート層出身の女性が「天皇に献上された美女」へとイメージ形成されていったのはなぜか。律令前史の宮廷女性の実像に迫り、ゆがめられた“采女幻想”から解き放つ。
目次
幽玄の采女像―プロローグ
采女の「〓」と雄略天皇
采女の「貢」とは何だったのか
海を渡る采女
東アジアの女郎と采女
『天寿国繍帳』の采女と大女郎
采女の虚像と実像
幻想を乗り越えて―エピローグ
著者等紹介
伊集院葉子[イジュウインヨウコ]
1959年岩手県に生まれる。現在、専修大学・川村学園女子大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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南北
48
采女とは何かについて日本書紀だけでなく、江戸時代の資料や中国の史書など幅広い分野の資料を参照することで明らかにしようとした本である。近世以降のジェンダー・バイアスによって、歪んだ印象を受けることが多いが、女性が地方から大和朝廷に出仕し、神事やさまざまな仕事に従事するだけでなく、親族の将軍に同行して、海外に渡ることもあったとするなど興味深い記述があった。「古代の女性官僚」の著者が10年かけて研究した成果が読める貴重な一冊である。2024/10/04
サケ太
8
采女とはなんなのか。2024/09/22
眉毛ごもら
3
采女とはなんぞやということでジェンダーバイアスをできるだけ排除して検証している。結論としては官人としての女官であろう。采女と通じて罰せられたのは神事の妨害、人質説の根拠の采女を貢すに関しては貢は男性官人の登用時にも使用例がある、個人が妻妾として扱われることもあるが采女全体としての扱いでなく漢語の影響もが強い等イメージが変わる本であった。また采女という漢語について中国の史書の使用例も検証しているのでそのあたりも便利である。采女という存在は史料が少ないのがすごく悔しいぐらいに魅力的なキャリアウーマンである。2024/10/10
於千代
2
高校日本史でも登場する「采女」は、古代の地方豪族が娘をヤマト政権に出仕させた存在だが、近世の用語の援用や家父長制的なジェンダーバイアスによって「天皇に献上された美女」や「遊女」とされる場合がある。 しかし本書では、そうした思い込みによる誤解を排して史料に基づいて多方面から分析することで、采女は中央と地方を繋ぐ存在であり、地方政治を支え、外交を担い、場合によっては軍勢を率いる地方エリート層の女性だったと明らかにしている。 自らのバイアスを排し、史料に真摯に向き合うことの重要性を改めて感じさせられた。2025/05/06
古寺
1
古代の「采女」がどういう存在だったかを考察している。現代の男性と女性の関係の視点、「階級社会」を前提にした観点等、今の時代での「常識」を克服していく著者の姿勢に敬意を評したい。2025/04/29