出版社内容情報
空前の猫ブームといわれて久しい。化ける・祟るなど、江戸時代には狡猾で恐ろしいイメージだった猫は、どのように今日の地位を獲得していったのか。文豪たちに愛され、ネズミ駆除で重宝された一方、虐待、軍用毛皮の供出、食糧難による猫食いなど、苦難の路を辿った猫たちへのまなざしの変化を描き、人間社会のなかに猫の歴史を位置づける。
内容説明
化ける・祟ると恐れられた猫は、どのように今日の地位を獲得したのか。文豪に愛されネズミ駆除で重宝される一方、三味線や毛皮用にも使われた猫たちへのまなざしの変化を描き、人間社会に猫の歴史を位置づける。
目次
「猫の歴史」を考える意味―プロローグ
第1章 猫の「夜明け前」―前近代の猫イメージ
第2章 近代猫イメージの誕生―猫が「主役」になるまで
第3章 国家が起こした「猫ブーム」―猫の三日天下
第4章 猫の地位向上と苦難―動物愛護と震災・戦争
第5章 猫の戦後復興と高度成長―猫の「ベビーブーム」
第6章 現代猫生活の成立―高度成長終焉以降
猫の近代/猫の現代とはなにか―エピローグ
著者等紹介
真辺将之[マナベマサユキ]
1973年千葉県出身。2003年早稲田大学大学院文学研究科史学(日本史)専攻博士後期課程満期退学。2009年博士(文学)の学位を取得。現在、早稲田大学文学学術院教授、ルーヴェン・カトリック大学(ベルギー)客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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宇宙猫
19
知っていることも多いし、可哀想なことも多くて走り読み。動物の扱いは随分かわったので、当時は可愛がってたんだけど今から思うと可哀想なことしたなって気になっちゃう。2021/10/13
さとうしん
17
日本人は昔から猫好きだったのか?という疑問から入る猫と日本人の歩み。猫好きとされる人が同時に猫の虐待の担い手となったり、関東大震災や戦争による被災、戦時中の猫の供出、そして水俣病による猫の被害等々、我々が現在の文脈で「猫好き」となり、猫が「家族」の一員となるまでの苦難の歩みが描かれる。私自身と今は亡き飼い猫との暮らしも歴史の中に位置づけられるのだなと感じた。2021/06/07
inarix
13
「猫の歴史」とはいえ人間が著するものなのでそれは「猫に対する人間のまなざしの歴史」にほかならない。そこには猫に対する感情と価値観…愛玩だけでなく無関心も嫌悪も迫害も利用も同等に存在する。江戸時代から明治維新。近代化する日本の社会の中で、変わる人間の生活や価値観とともに、猫へのまなざしもまた大きく変わっていく。ペストの流行、「猫イラズ(殺鼠剤)」の登場、震災と戦災に巻き込まれ、食糧不足から高度経済成長を経た後の猫専門商業誌とキャットフードの登場、そして巻き起こるブーム。猫の存在感の変化は人間社会の変化の鏡。2022/01/26
ねこ
11
多くの史料から人間社会で猫の置かれた立場を紐解く歴史書といえるでしょうか。かつて猫は嫌われもので、平然と虐待され、捕獲されて三味線にされ、実験材料にされ、など、猫好きとしては読むのが辛いものがありました。空前の猫ブームと言われる現在、家猫は室内飼いが原則だし、殺処分は悪、地域猫活動が活発で野良猫はほとんど見なくなりましたが、ここに至るまでの道程は長かったのですね。2021/08/03
アイロニカ
9
日本の近現代に於いて人々の生活環境が変わると共に、野良やペットとしての猫がどのような視線や扱いを受けてきたのか、当時の新聞雑誌や文豪の記述から丹念に追った本である。虐待や殺害など現代の認識からは胸が悪い出来事も多く紹介されているので猫好きには辛いが、人間の文化的価値観が時代に容易く揺さぶられ、それでもなお長い時間の努力によって少しずつでも好転していった様には勇気づけられる面もある。猫と並んで犬もたびたび史料に登場するのが気になり、できるものなら同等に扱うべき題材なのだろうとも思った。2021/08/09