出版社内容情報
日米開戦直前に発覚したゾルゲ事件で検挙され、刑死したジャーナリスト尾崎秀(ほつ)実(み)。近衛文麿のブレーンとして、日中戦争から対米交渉へと激動する時代に何を考え行動したのか。ゾルゲとの出会い、逮捕までの経緯、特高による拷問などに関する新たな事実を、新資料によって人間関係をたどりつつ明らかにし、評価が多様化する尾崎の実像に迫る。
内容説明
日米開戦直前に発覚したゾルゲ事件で検挙され、刑死したジャーナリスト尾崎秀実。近衛文麿のブレーンとして、激動の時代に何を考え行動したのか。新資料によって人間関係をたどり、評価が多様化する尾崎の実像に迫る。
目次
若き日々
上海の尾崎
ゾルゲとの邂逅―仲介した人物は誰か
革命の嵐のなかの中国
ヌーラン事件による帰国
帰国後の尾崎
近衛内閣嘱託
満鉄調査部
三国同盟と戦争の危機
開戦前夜―漏洩した御前会議の情報
諜報団の崩壊と尾崎の逮捕
ゾルゲ裁判と戦時下の処刑
著者等紹介
太田尚樹[オオタナオキ]
1941年東京都に生まれる。1965年東京水産大学(現東京海洋大学)卒業。カリフォルニア大学サンフランシスコ校、同バークレー校留学(1967~71年)、スペイン・マドリッド大学留学(1972~76年)を経て、東海大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ネコ虎
9
太田尚樹氏の尾崎評価はかなり甘いように思われる。スパイ尾崎、売国奴尾崎に魅力を感じるといい、シンパシーを感じているらしい。何とか尾崎を擁護しようという記述がそこはかとなく感じられる。だから、この著作で太田は何が言いたいのか曖昧なのだ。「崩壊朝日新聞」を書いた長谷川熙氏のような迫力が感じられない。尾崎が何を目的にスパイをしていたのか分析が平板で、特高による尋問への尾崎の陳述の裏を読もうとしないから、尾崎が日米開戦回避に尽力した愛国者のように書く。だから周辺の共産主義者への追求も曖昧だ。読んで損した気分。2016/03/30
Isamash
6
太田尚樹東海大名誉教授による2016年の著作。スパイとして有名な尾崎秀実に関心あり本書を読む。一高・東大卒の朝日記者というエリートで明るい人好きのする人間とのこと。英語堪能でドイツ語も話せる特派員でゾルゲと上海で関係が生じたという。帰国後に中国専門家として名を馳せ近衛内閣ブレーンとなるのは驚き。共産主義信奉者なのは少し調べれば明白となろうし著者も指摘する通り米国力量把握を踏まえたリアリティ有る国際的視点が明確に欠如している様に見える。ブランドと人柄からの選択の問題とチェックシステム欠如は、今も残る課題か。2021/09/16
田中峰和
5
「私はスパイではない。政治家である」と特高に語った一言から尾崎のプライドの高さが量られる。ゾルゲ国際諜報団の一員として暗躍し、独ソ戦が近いことや日本が南進するという重要情報を盗み出した尾崎。蒋介石を叩くため日中戦争泥沼化への言論活動や、ソ連に日本軍の南進情報を伝え対独戦争に注力させたのも、全ては共産主義勝利のため。中国問題に強いジャーナリストの立場から近衛内閣の嘱託として情報の中枢に接近。満鉄調査部に移ってさらに諜報のメッカに入り込んだ尾崎からの情報は日本の敗戦を早めたのか。彼に信念があったことは確かだ。2017/05/06
河童
4
ゾルゲ事件に関する本の2冊目。たった2冊で事件の全容なんて知る由もなし。そもそもインテリジェンスの世界のお話の全容なんて明らかになることはあり得ない。でも、これからも関連書籍を読んで探ってみたい。2017/12/31
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- 和書
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