出版社内容情報
平安後期から200年間、平安京は飢饉や戦で危機に瀕する一方、仏教都市と化す。仏教史の観点から平安京が辿った歴史を捉え直す。
内容説明
平安時代後期からの二〇〇年間、平安京は多様な災害によって危機に瀕する一方、度重なる寺院建設で仏教都市と化す。仏教の拡大は過酷な時代の救済に結びついたのか。仏教史の観点から平安京が辿った歴史を捉え直す。
目次
中世仏教からみる平安京―プロローグ
1 東アジア世界と平安仏教(王朝都市の仏教とその救済力;平安京と寺院の配置;摂関期仏教のゆくえ;院政期仏教の創出)
2 仏教都市平安京(一日の仏事―嘉保二年九月二十四日;一年の仏事―永久元年;塔に囲まれた平安京)
3 新しい仏教の時代(究極の秘密仏事;平安京の民衆と仏教)
内乱とその後―エピローグ
著者等紹介
上川通夫[カミカワミチオ]
1960年、大阪市に生まれる。1984年、立命館大学文学部史学科卒業。1989年、立命館大学大学院文学研究科博士後期課程修了。現在、愛知県立大学日本文化学部教授、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chang_ume
9
京内寺院を禁じていた平安京が、いつ、どのように「仏都」になったのか。それを入宋僧奝然の帰国を画期として、北宋・契丹の滅亡に至る東アジア国際環境の変転から探る。朝廷の自己認識として「独善的で一方な仏教帝国理念」が育まれ、それゆえに院政期の寺院造立ラッシュを生んだとの理解です。因幡堂・六角堂などの京内寺院の成立もこの文脈で捉えられますが、正直ちょっとよくわからない。著者が説くところの国際情勢と寺院立地の関連に、脈絡を見出しにくい。京内寺院の成立・増加は国策なのか。その他、仏教の民衆供養の問題など投げっぱなし。2022/02/13
アメヲトコ
6
本来寺院を排除して成立していたはずの平安京がいつしか仏教都市化していく、その転機となった10世紀半ばから12世紀にかけての動向を論じたもの。一部にはここまで言い切っていいのかと思う箇所もありましたが、国内のみならず、東アジアの仏教世界の動向の影響についてもふれているところなど、興味深い指摘がありました。2015/12/23
イツシノコヲリ
4
摂関期から院政期までの仏教史を扱う。平等寺などの平安京内の寺院の創建についてまとめてあったのは良かった。後半は、平安京での1年間の法会などが書かれていたが、つかみどころがない文章で結局よく分からなくなってしまった。また読みなおすことにしたい。2022/12/05
maqiso
3
平安京の中には仏教施設は少なかったが、東アジアの緊迫した状況を受けて、仏教都市に変容した。矢継ぎ早に大量の仏像が作られたの面白い。朝廷からの伝搬は具体的だが、民衆側の記述は薄め。2019/07/28
はちめ
2
生煮え感もある内容だが、当時の人間にとっての仏教の受容状況は通説的な理解を超えたものだということについては共感できる。もう一度読み返してみたいとも思う。2015/12/28