出版社内容情報
明治末期以降に増加した都市部の新中間層は、それまで一部の好事家のものだった美術工芸品などの「趣味」に憧れ、手に入れようとした。そして、百貨店で手軽に獲得する方法を選ぶ。風流な道具や趣味の人形など、百貨店で販売された商品を取り上げ、その背後にある〈良い趣味〉を読み解く。「趣味の大衆化」を引き起こす場としての百貨店の活動を考える。
内容説明
明治末期以降、都市部の新中間層は一部好事家のものだった「趣味」に憧れ、百貨店で手軽に獲得しようとした。風流な道具や趣味の人形など、百貨店で販売された商品の背後にある“良い趣味”を読み解き、その活動を考える。
目次
1章 近代初期の消費と趣味の諸相(「良い趣味」を創り出す人々;「良い趣味」を手に入れようとする人々)
2章 美術をめぐる大衆の眼差し(百貨店と美術;中間層における美術品の役割)
3章 風流の大衆化(美術―工芸―風流道具;風流道具の展開;昭和初期「国風」デザインと江戸趣味)
4章 人形玩具趣味の興隆(好事家と家庭―雑誌『家庭と趣味』に見る大人本位の趣味;百貨店と人形玩具趣味の大衆化;関東大震災後における人形玩具趣味の大衆化)
著者等紹介
神野由紀[ジンノユキ]
1994年、筑波大学大学院芸術学研究科修了博士(デザイン学)。現在、関東学院大学人間環境学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mk
3
都市部における俸給生活者として上京した人々を中心として、新中間層といわれる社会階層が生まれた大正期。江戸時代以来の「好古」や「風流」の世界の延長線上に「趣味」を営む近代的な家庭像が造形されていく道筋を追跡した読み物。一連の過程に大きな役割を担った三越以下の百貨店の博覧会や催事商品販売の具体相がうかがえる。茶の湯や絵画のような金のかかる趣味には手が出ない中間層をお手軽な人形雛や伝統家具へと誘導していく商業戦略は何ともしたたかだが、これも私たちにとっての近代の記憶の忘れえぬ一コマであるのは間違いない。2016/05/10
Nunokawa Takaki
3
江戸後期から明治を駆け抜けた「趣味」という文化。骨董品、絵画、玩具などの収集に人々は熱を上げた。それまで高尚と見なされていた「趣味」は西洋文化の導入で一気にハードルが下がったという。そして男達は収集に翻弄していく。僕も小さい頃はゴジラや恐竜のフィギュアを集めたっけ。何かをコレクションしたいという気持ちは男のロマンではなかろうか。今は不況不況と嘆くけれど、こういう消費は景気を良くするために必要なのではないか。昔と比べて豪快にお金を使っている人が減ったのは気のせいかな。かくいう自分もお金なし笑。2015/07/15
takao
2
ふむ2022/08/01
とす
2
これも学術書のような感じ。百貨店についての本を読む一環。人形や茶道具などが百貨店で扱われるようになり、大量生産されたりするという説明が記憶に残った。良い趣味を多くの人に届ける百貨店が、独特な立ち位置の人形や茶道具を作り出していくという説明が面白かった。どうあるのが正解なのか。2018/11/30
呑司 ゛クリケット“苅岡
1
子供の頃、百貨店は、余所行きの着替えをしてから行くべき所だった。何かを教えてくれる権威としての存在だったからだと思う。この本で百貨店の歴史を知るだけでなく、自分の子供時代を懐かしむことが出来た。今になってめったに足を運ばない百貨店に年一度各国のチョコレートを見に行っている。催事好きの友人は北海道や博多の名物を探しに行く。ネットショップでより多くの商品から情報付きで手に入れることが出来る現在、百貨店は何を発信すべきなのか?著書の中に解答は無い。2021/05/21