内容説明
近代の文語文史料を読むには、漢文訓読の知識が欠かせない。容易に解読できる気がするが、漢語と和語が入り乱れるがゆえに数々の罠が潜む。語義、語彙、文法など、基礎から丁寧に、漢文訓読体を読み解く術を解説する。
目次
第1章 漢文訓読体とは何か?(文体としての位置付け;本質的原理)
第2章 漢文訓読体の基礎(文章の体裁;文字;語彙;発音;文法)
第3章 訓読表現の諸相―『米欧回覧実記』(漢語および典拠に基づく字句;典型的な訓読表現;返り読み表現;紛らわしい訓読表現;訓読表現の極北)
第4章 訓読表現の詳細―『文明論之概略』(倒置表現;使役表現を転用した仮定表現)
第5章 閲読篇―“明六雑誌”二篇補注(体裁と符号)
著者等紹介
古田島洋介[コタジマヨウスケ]
1957年、横浜市に生まれる。1981年、東京大学文学部フランス語フランス文学科卒業。1989年、東京大学大学院比較文学比較文化博士課程単位取得満期退学。現在、明星大学人文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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bandil
4
現代人が文語をすらすら読めない理由がよく解った。「本質的に大きな欠陥を抱え込んでいる」「滅びるには滅びるだけの理由が存在した」と筆者のいうところの欠陥、理由を解説し、文語文を読めるように導いてくれる。しかし、書き言葉が「漢文訓読→文語文→現代文」と変遷してきているので、漢文の知識の無い者は、必然的に漢文についても同時に習得していかないと歯が立たない点には注意を要する。文語の曖昧さは弱ったものだが、それを楽しめるとも解せるので、積極的に挑んでいきたい気持ちにさせられた。筆者渾身の労作。素晴らしい指南書2016/03/08
フルボッコス代官
3
ほしかったのはこれだった!「古文書を読む」系の本はくずし字の解説本ばかりで、それも江戸期以前の古文書を読むためのものだが、近代史をやっている者にはどうも違うと思っていたところ、この本を見つけた。漢文調の明治以降の文書を読むのには、これが適している。まさに文語文を読む入門書であろう!2020/09/25
spanasu
2
漢文訓読体について『文明論之概略』や『米欧回覧実記』、「明六雑誌」を素材に解説する。漢文訓読体の曖昧さは伝わったので、あとは実際に読んでみて慣れるしかないのであろう。2019/11/07
Y.Yokota
2
漢文訓読体(江戸後期から明治初期によく用いられた漢文を書き下したような日本語)を閲読するための指南書。少し古い本は読むけどそこまでは遡らないなあ...という自分のような者にもためになる内容。著者の筆致がとにかく軽快で固苦しくないし、解説も丁寧。これ一冊で閲読術が全て身につく...程に漢文訓読体は易しくないようだが、どのように読み解いていくかの助けには大いになると思う。2016/01/12
rubeluso
2
今まで手癖で読んでいたので解説書が出たのはありがたい。しかし、いざ学習してみようとなると、本書の解説の中でも例外・変形・書き手の恣意が出るわ出るわ。著者が「もともと漢文訓読体は根本的な弱点を抱え込んでいたのである。その内的要因ゆえに、漢文訓読体は晩かれ早かれ滅びる運命にあったとも考えられるだろう」いうのもむべなるかな。 解説はおおむねわかりやすいが、書名に「日本近代史を学ぶための」とあるならば、それこそ途中で名前の上がっている『蹇蹇録』などをテキストにした方が良かったのではと思う。2014/05/08