出版社内容情報
畳の縁を踏んではいけない、という一節が500年前に書かれた武家奉公の心得にある。江戸時代を経て現代に伝わる礼儀作法は、室町時代に発達した武家故実に大きく影響を受けている。故実とは弓馬や軍陣などのしきたりを始め、立居振舞いから手紙の書式までを含むが、この故実を通して中世武士の姿や動作、人生儀礼を生き生きと甦らせる類のない1冊。〈主な目次〉はじめに/弓馬軍陣の作法(弓矢/馬/軍陣)/武家奉公の作法(殿中/御供/酒食饗応)/室町幕府の格式と作法(格式の成立/将軍御対面儀礼/身分格式による規定)/人生儀礼の作法(誕生祝/成育祝/成人祝/婚礼)/むすび/索引
内容説明
人はいつから畳の縁を踏めなくなったのか。弓馬や軍陣のしきたりを始め、立居振舞い、手紙の書式などの作法を故実というが、室町期の武家故実を通して中世武士の姿や動作、人生儀礼を生き生きと甦らせる類のない一冊。
目次
第1 弓馬軍陣の作法(弓矢;馬;軍陣)
第2 武家奉公の作法(殿中;御供;酒食饗応)
第3 室町幕府の格式と作法(格式の成立;将軍御対面儀礼;身分格式による規定)
第4 人生儀礼の作法(誕生祝;成育祝;成人祝;婚礼)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MUNEKAZ
12
小笠原流や伊勢流の故実書をもとに、中世武家のお作法というかマナーをまとめた一冊。一読して「メンドくせー」という感想が先立つが、これを完璧に演じきれたら、それは確かに教養溢れる振る舞いを演出してくれるだろう。故実書が扱うのは基本的に幕臣がメインなので、都の武士と田舎侍の差が、こういった儀礼の場でありありと現れて、足利氏を中心とする幕府の求心力を高めたと思われる。因みに下戸は酒宴のとき、主人にアイコンタクトで配慮を求めても良いが、主人が気付かなければ覚悟を決めろとのこと。今も昔もそんなものである。2024/09/09
金監禾重
4
室町時代中期に「マナー教科書」や「ノート」が多数記されたことから、武家の作法が整備され、堅苦しくなったことがうかがえる。幕府が京都に拠点を置き、南北朝内乱も終結したことで武家が公家に近づいたと言えるだろう。将軍を頂点に家格のピラミッドが形成され、儀式の場だけでなく道端でも上下関係を演出するようになった。鎌倉時代にはより「家風」が尊重され、公の場でバラバラにふるまっていた様子が記録されている。2022/04/07
りんか
2
戦の作法、奉公の作法、身分による作法、冠婚葬祭の作法、今はなきものから今に通じるものまであって興味深い。時代による作法や仕来たりを理解してから当時の作品に触れ直すと新たな世界が見えてくる。2015/05/14
邑尾端子
1
難解とされる中世の故実書を長年研究し読み解いて来た二木先生ならではの、武家作法の総括ともいうべき一冊。この本自体は読みやすいが、書かれている内容…中世武家の作法アレコレが本当に色々と細かくて「おぼえきれんわ!」と頭が爆発しそうになる。それにしても、室町幕府ってほんと饗応・接待のために存在してるかのごとく、儀礼偏重した機構だよなぁ…2013/06/22
suzuki-takefumi
0
鐙に足を掛けているか、東西南北がどうこうが現代から見るとどうでもいいように、現代のお辞儀の角度やノックの数も後代からは無意味な規定に思われるんだろう。礼儀は当事者双方の共通認識で成り立ってるんだなあ。2012/07/19