内容説明
中世社会を知る基本は荘園制にある。にもかかわらず研究の細分化のため、個人で荘園史像を描くことは不可能とされてきた。本書はそれを乗り越えて中世史研究の泰斗がその全史を大胆かつ平易に描いた日本荘園史の決定版。
目次
序章 荘園を見る目
第1 荘園の発生
第2 荘園制の成立
第3 荘園制の展開
第4 荘園制の解体
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゲオルギオ・ハーン
24
荘園の研究書として有名な一冊。律令制度を唐から取り入れたはいいが、運用するための中央集権制度が整っていないこともあり、計画どおりの徴税はできなくなっていく(予定より少ないではなくそもそも得られないという地域も出る始末)。徴税したものを分配することで現地の有力者や調停で公共事業や財政を肩代わりをしてくれる有力者も徴税事業に関わらせて取りっぱぐれを予防することを狙い、これが荘園制度の成立、発展へと繋がっていく。そのため、荘園は最初から免税対象になっていたわけではなかったそうだ。2022/09/26
翠埜もぐら
24
荘園の発生から解体まで丁寧にそして深く追った大変面白い本です。難解な話で引用も多いのに文章はとても読みやすく、その都度実際の荘園の資料を用いての説明は説得力がありました。常に不安定で「廃村」してしまうことも珍しくない農村が、貨幣経済の発展と商業の拡大、大きくなる物流なのか形が変化していき、治世者との関わり合いさえ変えた挙句、幕府瓦解の一端を担っていったって、やっぱり銭の力は恐ろしいわ。「歴史は経済だ」と言うのが持論なので、チャンバラよりこう言う本が最近は楽しいなぁ。巻末に用語索引があるのもありがたや。2022/05/18
MUNEKAZ
15
日本中世史の泰斗が、「荘園」の誕生から衰退まで基本から説明してくれる一冊。国家の積極的な関与から始まった初期荘園の成り立ちや、なんとなく荘園制全盛と思いがちな摂関政治期が全然そんなことなかったりと意外な事実に驚く部分も多い。いまいちピンとこなかった下地中分についても、領主側・地頭側にどういうメリットがあったのかがわかって納得というところ。日本史に興味があっても「荘園」って難しそう、メンドそうという悩みに答えてくれる良い本だと思います。2021/03/05
まえぞう
11
再読しました。20年も前の本ですが、よくまとまっていて、しかもわかりやすいです。院政開始から中世が始まって、秀吉の天下統一から近世だとすると、大まかに鎌倉時代が中世前半、室町が後半になります。この間、重層的な職の秩序で維持される荘園公領制が武士による一円支配に進むわけですが、鎌倉幕府が制度の維持を目指した一方で室町幕府にはその気配が見られなくなるのが一番の違いでしょうか。最近はまた日本の中世が注目されていますが、荘園からみたお話しも読んでみたいです。2019/04/27
虎っち
6
下地中分の重要性がわかった一冊。荘園制が発達し、戦国大名によって解体されるまでの過程が描かれている。2018/05/09
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- 令7 神聖館九星本暦