内容説明
自筆を証明する花押(書き判)。敵味方を区別する武士の旗印や家を誇る家紋。言い伝えでなく史実から探る姓氏・系図。これらを踏まえ、文書の真偽を検討する方法など、古文書を読み解くための要点を平易にまとめた名著。
目次
1 花押(花押と日本史の謎)
2 紋章(紋章と日本人;武門の象徴 姓氏と紋章;紋章研究の手引き―楯紋・旗紋・幕紋の考察)
3 姓氏(苗字と地名;姓氏と古文書;めくら系図批判)
4 古文書(古文書の復活―古文書とはこういうものである;偽文書の始末;堀直寄鉄砲注文書―大坂夏の陣の新史料として;由比正雪の自筆消息;門松の古文書;晩秋の法隆寺村にて)
著者等紹介
荻野三七彦[オギノミナヒコ]
1904年東京市に生まれる。1929年早稲田大学文学部史学科卒業。東京帝国大学文学部史料編纂所嘱託、早稲田大学教授、聖徳太子奉讃会理事、永青文庫理事等を歴任。文学博士。1992年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しびぞう
4
面白かった!そして、大いに背中を押された。そして、最近このような本は出版されていないのではないかと思った。雑誌に寄稿された論文をまとめたものとのことだが、後からこの分野を目指す人への暖かな眼差しに満ちたものばかりだった。他方、先人に対しての意見は厳しい。私事ではあるが、先祖を探したいがために一歩を踏み出したら日本史等々を丸ごと勉強する羽目になってしまったことが決して間違いではないことを知ることもでき、励まされた。なんというか、こういう先生の存在というものが、懐かしい。今の世にはいるのだろうか。2022/09/07
wang
0
花押の部と、その他の部分でかなり違いがある。花押の部は、歴史や見方に関する研究成果で、どのように作られたのか年代による流行や書き方について。その書く場所や名前との関係により軽重があり書札礼に違いがあること。人によっても花押は変化する。それらを体系的に研究して参照することで文書の真贋や書かれた年代や相手の立場などもわかるという。日本史研究においても重要なものとわかる。後半は著者があちこちに書いた雑文で、重複も多いが記述が平易で読みやすい。吉良氏の系図研究や偽書の読み解き、古文書の読み時などは特に面白い。2016/03/20