内容説明
維新三傑と称された「英雄」西郷隆盛は、なぜ西南戦争を引き起こし「敗者」となったのか。詳細な戦史から薩軍の敗因と結果を分析。西郷のカリスマ性がもたらした内戦の責任も追及し、近代史における西南戦争を問い直す。
目次
顕彰された「敗者」西郷隆盛―プロローグ
1 苦節の英雄西郷隆盛(斉彬の寵臣として;幕末政局と西郷)
2 征韓論政変と私学校成立(明治国家の柱石;西郷遣使問題と政変;下野後の西郷と士族)
3 西南戦争勃発(薩軍挙兵;熊本城攻囲と田原坂;退陣と終焉)
西南戦争の経験―エピローグ
著者等紹介
落合弘樹[オチアイヒロキ]
1962年大阪府に生まれる。1991年中央大学大学院文学研究科博士課程後期課程国史学専攻修了。2001年京都大学博士(文学)。現在、明治大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マウンテンゴリラ
2
いよいよこのシリーズも終盤の近代に入り、私自身も、政治家、軍人としては唯一、敬愛すると言っても良い、西郷隆盛の段となった。私が政治家や軍人に信用が置けない理由は、皮相的言論による誘導(誤魔化し)や力による支配への思考が強く見られるためだが、西郷にも、そのような思考がなかったとは言えないだろう。それでもやはり、その人物に惹かれる何かがある。我々一般人が、その実体を知るのは不可能かも知れず、提供される資料を多角的、客観的に見るしかないが、どうしても今の政治家と比べて、スケールの違いを感じざるを得ない。→(2)2022/06/20
Mr.deep
2
前半の維新の三傑時代の英雄モードと、後半の政争に破れて下野してからのダメおやじぶりとの落差がひどい2020/08/11
flat
1
西郷隆盛の生涯と共に西南戦争の詳細が書かれている。西南戦争の部分は地図を眺めながら読むと良いのかもしれない。全体的には知っている事が前提で書かれているケースが多く、その点が読みづらさの要因になっていたように思える。ブライト艦長風に言えば「編集なにやってんの」とでも言えば良いだろうか。中身は詳細にまで調べられているのでその点が惜しいと感じる。
吃逆堂
1
九州全土を巻き込みながら展開しつつ、最後は山岳地帯を経由して再び鹿児島に、しかも敵方に落ちていたのを奪回して戻ってくるという、この内戦の奇怪さがよくわかる。欲を言えば、人名・地名とも固有名詞が煩雑でたどりにくかったので、部分的な地図や人名リストがところどころに欲しかった。挙兵前夜の私学校の様子には、同調圧力のすさまじさに「うげっ」となったし、幾度も勝機を逸した上層部の慢心ぶりには疑問も尽きないが、それでも城山の悲愴感はやはり圧倒的ではあるな。2016/08/02
wang
1
維新後最大の内戦の経過を詳細に記述。開戦から西郷の自決まで、誰がいつどこで何をしたか逐一書かれており戦争の経過がよくわかる。概要は知っていたが、戦争がほぼ九州全土に及び半年も続いた大戦であったとは知らなかった。だがこの戦争での西郷の思いは見えない。ただ担がれて仕方なく戦っていたのか?日本をどうしようと思って下野しどんな目的を持って薩摩にとどまり何を目指して決起したのか?幕末期の記述は不満。西郷が国家感が何か、維新戦争時の位置づけや評価など、大局観歴史観に基ずく記述がなく、維新第一の功が何なのかも不明。2013/10/26