内容説明
秀吉の直臣、石田三成はなぜ「敗者」となったのか。徳川幕府によって「書き換えられた」豊臣政権の大名支配を「武家家格」から再考。通説の「五大老・五奉行制」を問い直し、三成が臨んだ“天下分け目の戦”の真実に迫る。
目次
描かれた関ヶ原合戦―プロローグ
1 秀吉の絶頂期=天正十六年(一五八八)
2 秀吉最大の危機=文禄四年(一五九五)
3 秀吉の死と関ヶ原合戦=慶長三~五年(一五九八~一六〇〇)
4 豊臣政権の特質と関ヶ原合戦
関ヶ原合戦に敗れしもの―エピローグ
著者等紹介
矢部健太郎[ヤベケンタロウ]
1972年東京都に生まれる。2004年國學院大學大学院文学研究科日本史学専攻博士課程後期修了、博士(歴史学)。現在、國學院大學文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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keint
5
関ヶ原合戦を秀吉死後からではなく、豊臣政権確立期から「武家官位」というキーワードで関ヶ原合戦に至るまでの政争や出来事をまとめている。 秀次切腹が秀吉の命令ではなく本人の意志であったこと(福島正則がそれを止めなかったこと)、五大老・五奉行が江戸時代以降に作られた概念であったことが個人的には新鮮なところであった。2019/10/04
ジャケット君
4
授業にて。題名から、正規軍手中の石田三成視点の関ヶ原を論じるのは後半。前半は豊臣政権の独創官位やご自慢の秀次切腹研究についての前戯。清華成、公家成の前提知識を区分けして説明。尺埋めるためか福島正則首謀者説の秀次事件。 戦争の全貌は勝者によって教えてもらう。それが常ではあるが、マジメナ学者さんがめんどくさそうな量の史料を頼ってこんだと推理する。そんな気概に脱帽もんだな。俺にはできねえ。2023/02/02
庄屋之者
3
関ヶ原合戦の中身ではなく、その前後(特に前)に関する通説的理解に疑問を呈した書であり、痛快であった。 一次史料をもとに検証すると「五大老」などの(徳川幕府によって創作された)用語でこの時期を理解することは、豊臣政権の本質を誤って見てしまうことになりかねず、それが関ヶ原合戦の誤解にもつながってしまうことが分かることから、歴史研究においていかに一次史料が重要であるかを感じた。2021/02/15
美代子
3
関ヶ原合戦の新しい見方!そもそもの前提を疑って本書は書かれている。勝者が描いた歴史を私たちは信じているので、少し穿って見てみるのは大切かも。豊臣政権から徳川幕府が書き換えたというのは驚き。たしかに家康は下克上したわけだが、主家を滅ぼしたにも関わらず光秀程嫌な印象を与えないのは様々な工作があったからなのだ。三成の挑んだ関ヶ原。2014/03/13
わかめスープ
2
武家家格という、一見地味な観点から関ヶ原合戦を見るという趣旨だったが、めちゃくちゃおもしろかった…! 五大老などの通説を、秀吉による政治的格付けから丁寧に読み解いていくことによって、通説がいかに徳川方によって改変されたものであるのかがよくわかった。2024/01/08