内容説明
大臣として実権を握りながら「乙巳の変」で滅亡した蘇我氏本家。勝者の歴史書『日本書紀』は「稀代の逆臣」をいかに創出したのか。稲目・馬子・蝦夷・入鹿ら四代の軌跡を辿り、敗者から見えてくる「大化改新」像に迫る。
目次
「敗者」蘇我氏の語られかた―プロローグ
1 「敗者=逆賊」蘇我氏の誕生(捏造された蘇我氏の大罪;『日本書紀』と王朝交替;天智天皇像の転回)
2 蘇我氏四代の軌跡(蘇我氏の成り立ち;初代・稲目の軌跡;二代・馬子の軌跡;三代・蝦夷の軌跡;四代・入鹿の軌跡)
3 「大化改新」の実像(狭義の「改新之詔」をよむ;広義の「改新之詔」をよむ;「五十戸」支配の創出;「官僚」の創出)
蘇我氏「大化改新」の可能性―エピローグ
著者等紹介
遠山美都男[トオヤマミツオ]
1957年東京都に生まれる。1986年学習院大学大学院人文科学研究科史学専攻博士後期課程中退。1997年博士(史学、学習院大学)。現在、学習院大学・大東文化大学・日本大学・立教大学、各非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mazda
23
圧巻のボリュームでした。全てを読み切ったわけではないですが、古事記、日本書紀編纂の天武天皇、持統天皇の立場で見れば、大化の改新の立役者中大兄皇子(天智天皇)を悪者にはできないと思います。蘇我氏が天皇家の乗っ取りを画策していたから斬った、ということですが、中大兄皇子に協力した中臣鎌足は以降藤原姓を名乗り、子の不比等に至っては娘を皇室に嫁がせるという政略結婚まで実行しています。これが「乗っ取りの画策」でなかったら何でしょうか?蘇我氏は、藤原の揺れ衣を着せられたのかも知れません…。2015/06/13
MrO
4
なんか、死人に口なし、というか。しかし、今まではお飾り程度と思っていた皇極天皇がすべての黒幕だったとは。読み応えのある歴史ミステリーだった。2020/05/19
マウンテンゴリラ
2
これまで本シリーズを読んだ限りで、強く感じさせられたことは、歴史における生半可な知識、常識が、必ずしも史実を反映したものでは無かったということであった。それは本巻についても同様のことが言え、古代の大豪族蘇我氏が権力を濫用し、増長のあまり天皇の暗殺までも犯し、天皇家を支配下に置こうとした、とされる解釈の是非を問うものであった。蘇我入鹿の暗殺と蘇我氏本家の滅亡(乙巳の変)に始まる大化改新が、天皇親政、律令制の先駆けであったことは事実としても、その改革が蘇我氏を排除することを必然としたわけではない。→(2)2021/11/08
のぶさん
2
大化改新と蘇我氏についての著者独特の論を展開する。蘇我入鹿が天皇家を簒奪しようとしたという日本書紀の記述は、後世のでっち上げであり、乙巳の変は蘇我氏と軽皇子(孝徳天皇)の権力争いである。また、大化改新として知られる政策の一部は実際に孝徳天皇時代に実施された。そして、この政策は大化改新がなくても蘇我氏によって実施されていたであろう。そういう趣旨である。稲目・馬子・蝦夷・入鹿の四代の歴史の詳細、や旧俗矯正の詔に現れるこの時代のトラブルの数々など興味深い話も多い。ただ、独断的な表現は反感を感じ読みづらい。2015/03/20
ランラン
2
乙巳の変と呼ばれる権力闘争で敗者となった蘇我氏。逆賊とされてきた認識に修正を迫り再評価する内容で、改めて蘇我氏の果たした役割を認識しました。蘇我氏が、天皇家から何かを奪おうとしたのではなく、むしろ天皇家が蘇我氏から何事かを奪い取ったと結論づけられています。そのことを勝者は隠す必要があり歴史を塗り替えたとのこと。常に歴史は裏側を読む必要がありますね。2014/05/17