内容説明
小田原を拠点に勢力を伸ばした北条氏は、足利・上杉ら伝統勢力をいかに打ち破り、関東に「地域国家」を築いたのか。領国形成、対立を超越した平和秩序への動きから小田原落城まで、東国にとっての「天下統一」を問う。
目次
1 新旧勢力の激突
2 地域社会の変貌
3 北条・上杉・武田の角逐
4 北条氏領国の仕組み
5 東国政局の展開と織田権力
6 豊臣秀吉の全国制覇と東国
著者等紹介
池享[イケススム]
1950年、新潟県に生まれる。1980年、一橋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。現在、一橋大学大学院経済学研究科教授、博士(経済学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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coolflat
15
1頁。東国戦国史の特徴。一つは、戦国争乱は単なる領土の取り合いではなく、中世に替わる新しい社会秩序を作り出す運動であり、その主導権を巡り、村・郡・国といった単位で重層的に抗争が展開した。北条氏はそうした動きを取り込むことにより広大な領国を形成した。もう一つは、古河公方や関東管領など、室町時代にこの地域を支配していた鎌倉府の「遺産」が様々な形で引き継がれていたことだ。そのため、室町幕府の将軍・管領が存在した畿内地域に似た状況があった。それが新秩序形成の動きを複雑にし、数多の対立・抗争を生み出す誘因となった。2024/04/20
bapaksejahtera
11
吉川「動乱の東国史」シリーズ最終巻。古河等を含む鎌倉公方や関東管領等の伝統権力と国人層がせめぎ合う不安定な政治様相を示した東国は、経済面でも永楽銭基準の年貢収納制が残る等、確かに中央と異なる中世後期を過ごす。その為戦国大名の形成は縁辺に生じた北条氏によった。更に織豊権力成立の圧力は、一気のシャッフルを促がす。その後の関東は徳川氏移封により大きく変わる。これまでの巻で煩瑣だった権力移動の記述が本巻で当然に簡略化した結果、地域社会変化に関する項目や幾つかのコラムが機能し、シリーズ最後に理解し易いものとなった。2022/01/02
陽香
3
201210102017/06/18
ブライアンズアワー
2
図解も多く非常に読みやすかった。東国大名は親・兄弟との争いの歴史だが、その中で北条氏は家中の結束が固く覇者に成り上がっていったのも納得できる。結城氏新法度から読み解く庶民の生活も興味深かった。上杉謙信の「敵に塩を送る」という有名なエピソードも、経済の観点から考えれば当然の政策とも思える。撰銭の項目も面白かった。村にも貨幣経済が浸透した結果、徳川時代に商人が力を持ったことに繋がったのかもしれない2017/05/10
MUNEKAZ
1
このシリーズはどれも内容は充実しているのだが、読みやすい巻とそうでない巻の差が激しいという印象。それでこの巻は一番読みやすかったもの。他の関東戦国史の本を読んでいても感じるのだが、対北条の担い手の主体が上杉(山内・扇谷→長尾)から、佐竹・里見・宇都宮といった関東の国衆へと移り変わっていく様は、ドラマチックである。2016/01/08
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- 和書
- 栗本鋤雲遺稿