内容説明
「一刻も早く援軍を…」。戦国大名たちはどのようにして遠隔地まで自らの意思や情報を伝えようとしたのか。主君から口上を託された使者、密書をしのばせた脚力自慢の飛脚たちが、命をかけて、戦乱の世を駆け抜ける。
目次
第1話 風聞と注進―畠山卜山と長尾為景の交信
第2話 出羽山伏―北条氏綱と長尾為景の交信
第3話 密書―長尾顕景と長尾為景の交信
第4話 書状の集積―白川晴綱と北条氏康の交信
第5話 情報の錯綜―朝倉義景と上杉輝虎の交信
第6話 飛脚の才覚―上杉謙信と佐竹義重の交信
第7話 書状の重み―毛利元就と毛利隆元の交信
第8話 確かな情報―北条氏政と北条氏邦の交信
第9話 殿下の御意―和久宗是より伊達政宗への通信
エピローグ 戦国時代の情報と通信
著者等紹介
山田邦明[ヤマダクニアキ]
1957年新潟県に生まれる。1984年東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。東京大学史料編纂所教授などを経て、愛知大学文学部教授、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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とし
11
同時代史料である手紙を中心とする文書を読み解きながら、戦国時代の「情報」のありようと、通信の実態について考察した本。戦国大名の手紙のやり取りから、その周辺状況や周囲の人々の動きを追いかけ、事態の実相を眺める9本のケーススタディ。僕は戦国当時の社会システムだとか構造といったものに興味があるので、非常に面白く読めた。外交権をもった「使者」の他に、手紙を運ぶだけの「飛脚」の存在がクローズアップされてたのはありがたかった。文中で取り上げられた手紙は、ほぼすべてに読み下しや口語訳がされているので、非常に読みやすし。2016/01/06
かやは
4
戦国時代の通信の有り様を9つのエピソードを通じて解き明かすという内容で、特に興味深かったのは第9話の伊達政宗のエピソード。関白秀吉の逆鱗に触れてしまい、秀吉の重臣たちから「上意御機色然るべからず候」という書状が到着しはじめて、殿下様がキレて部下が首をはねられそうになった、側近が取りなしてもだめ、進物なんてどうでもいいからすぐに上洛してくれ、殿下の御機嫌がましになったからチャンスは今しかない、なんて書状が続々と。しかも届くのに時間がかかるから手にしているのはすべて過去の情報というサスペンス!面白かったです。2018/05/24
Meistersinger
2
当然のことながら書面によるが、家臣(口頭で交渉もできる)、飛脚(足は速い)、山伏(捕縛の可能性が低い山岳路踏破?)と様々な運び手がいたと。2020/02/22
MUNEKAZ
2
9本の小話をもとに戦国時代の情報と通信を書いた本。登場する全ての手紙に丁寧な書き下し文と現代語訳がついているので、どの話も大変おもしろく読めた(とくに「出羽山伏」の話は出色!)。言葉の意味や書状の形式についてもコラム類でよくまとめられてあるのがうれしい。2015/05/31
サクヤ
2
毛利元就・隆元父子の頻繁な手紙のやりとりの件は特に興味深かった。著者も触れているように、情報の取捨選択や口頭伝達と文書の使い分けなど現代との相違点を考えさせられた。「言葉の意味の変化」などに触れたコラムも充実しており門外漢にも割合取っつきやすい本だと思う。2014/03/17