内容説明
山東半島の利権をめぐり第一次世界大戦に参戦した日本。ドイツとの開戦、英・中国との外交交渉の過程からその国家的意志を追究。シベリア出兵へ続くヨーロッパの政治状況の構造変化を、反戦思想家の足跡から検証する。
目次
二十世紀の起点としての第一次世界大戦―プロローグ
1 戦争の勃発
2 日本の参戦
3 『欧州戦争実記』と戦争報道
4 「戦いを超えて」―ロマン・ロランと反戦の精神
5 戦争目的・講和条件をめぐる政治―ロシア革命のインパクト
6 二つの講和―ヴェルサイユ講和と「人間的インターナショナル」
終わらぬ苦悩と新たな行動―エピローグ
著者等紹介
小林啓治[コバヤシヒロハル]
1960年島根県に生まれる。1983年京都府立大学文学部卒業。1989年京都大学大学院文学研究科博士課程修了。現在、京都府立大学文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mealla0v0
4
一般に、日本の総力戦体制論は第2次世界大戦のものを扱ったものが多いが、本書は欧州戦争と認識されていた第1次の日本に対するインパクトを論じている点で画期的。『欧州戦争実記』を丹念に分析し、新しい戦争の形態=総力戦がヨーロッパに与えた影響を分析しながら、来る将来の戦争に備え、日本はどのような動員体制を構築すればいいのか、そういう危機意識を持った言説が分析されており、興味深い。平時をシームレスに戦時の体制に接合可能にすべく、平時こそを改造せよ、というわけだ。2021/04/16
Takao
4
2008年1月1日発行(初版)。「戦争の日本史」というシリーズなのだが、半分以上はヨーロッパで始まった第一次世界大戦の話。本書の基調は、ロマン・ロランの時代認識で貫かれている。当時の社会主義勢力は国際主義を投げ捨てて、「愛国心」からの戦争賛成に雪崩を打っていった。「ジャン・クリストフ」の名前もロランの名前も知ってはいたが、本当のところ何も知らなかった自分に愕然とした。時代の最先端で未来を見通していたロランという人物にとても興味を持った。2017/07/15
星辺気楽
3
ちょうど100年前、欧州を中心にした世界最初の大殺戮総力戦が行われた。遅れてきた帝国・日本は、それを足場にさらなる高みに躍り出ようとし、世界5大列強にまで上り詰めた。現代日本の悪魔の原点であるこの時代のことを日本国民は、今こそ精査しておくべきだと感じた。2016/06/14