出版社内容情報
★おかげさまで早くも重版決定!
内容説明
古代史最大の皇位継承戦争=壬申の乱は、その後の律令国家建設にいかなる意義を持つのか。戦闘を克明に辿り、真の首謀者は持統天皇だったという斬新な視座から皇位継承に迫るなど、あたらしい「壬申の乱」像を描く。
目次
あたらしい「壬申の乱」像―プロローグ
1 開戦まで(白村江以後の戦時体制;東アジア国際情勢と壬申の乱 ほか)
2 乱の勃発(「挙兵の決意」―五月;美濃への死者―六月二十二日 ほか)
3 戦闘の開始と展開(飛鳥京での開戦―六月二十九日;大倭・河内国境攻防戦―七月一日 ほか)
4 戦闘の終結と戦後処理(瀬田川の最終戦―七月二十二日;大友の自害―七月二十三日 ほか)
5 壬申の乱の特質と結果(軍の構成について;支持勢力の問題 ほか)
戦乱を終えて―エピローグ
著者等紹介
倉本一宏[クラモトカズヒロ]
1958年三重県津市に生まれる。1983年東京大学文学部国史学専修課程卒業。1989年東京大学大学院人文科学研究科国史学専門課程博士課程修了。1997年博士(文学、東京大学)。駒沢女子大学人文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
六点
84
以前読んだ遠山美都男先生の同名の著作が大海人皇子のイニシアティヴを重視していたのに対し、持統天皇の意思を重視している。無論古代史の事であるから、直接的な証拠は無く、緻密な史料批判が必要となるわけである。そこで見られるのは、大海人皇子の事前準備の万全さ、用意周到いたらざるはなし。と、言う他無し。しかも大友皇子側周囲の退嬰的かつ戦意の低さが甚だしい事。大友側、大海人側に変わりなく徴収され戦うことになった兵士たちの運命に粛然たる思いを、著者が持つのは当然であると思ったけど。さて次は同著者の平安時代ものを読もう。2024/04/11
ようはん
18
井沢元彦の「隠された帝」を読んで壬申の乱辺りを詳しく知りたくて図書館にて借りた本の一冊。壬申の乱の勝敗を分けたのは大海人皇子の用意周到さも大きいが、大友皇子の求心力の無さも印象に残る。大友皇子本人の資質というよりは母親の身分の低さによる不利での後継や白村江の敗戦のような天智天皇の晩年の失策が影を落としていたように感じる。2021/12/22
はちめ
12
おそらく現時点で壬申の乱に関して最も網羅的かつ優れた一冊だと思う。特徴としては功臣に関する統計的分析と実際に現地を踏査した上での記述ということだろうか。細部については今後何度も読み直すことになると思う。壬申の乱を理解する上において不十分なのは近江朝側からの視点が十分ではないということ。これは日本書紀の性格上致し方ないことでもあるが、歴史の現場においてはそれなりの物語があったはずである。ここは想像で埋めるしかない。☆☆☆☆☆2020/06/28
紫草
10
私の学生時代くらいの昔だと、まだ皇国史観から抜けきれてないというか、つまり天武天皇を悪く言えないので「大海人皇子は自分が殺されそうになってやむなく立ち上がったのだ」って感じに教わったと思うんだけど、やっぱりこれは皇位簒奪のために大海人がしかけた戦争だったよね。吉野から東国に行く時、途中の伊賀国は大友のお母さんの(伊賀采女宅子娘)の出身地ではないのかなあ、どうしてそこも大海人の味方だったのかなあと不思議だったのですが、ちゃんと説明されてました。伊賀采女宅子娘さんの家は進軍の経路からは少し離れていたようです。2025/08/18
かわかみ
8
乱の真実の首謀者を天武天皇の后である後の持統天皇と推測している。ただ、自分にとしてはむしろ、この大乱を当時の緊張した国際関係との関連で捉え直した点を評価する。白村江の戦いで大敗した後に飛鳥から近江に遷都した天智天皇と大友皇子だが、近江朝は天智崩御の後に唐の要請に応えて新羅に遠征するために東国から兵を集めた。そもそも大化の改新が対外戦争のための国家総動員体制だったと思われる。天武(大海人皇子)は、その兵力をうまく横取りして近江朝廷を滅ぼしたと著者は推測した。大海人皇子が東国の兵力を集結できた理由がわかった。2025/08/01