出版社内容情報
契丹、宋、高麗、女真…。諸国の勃興と衰退がめまぐるしい東アジアにおいて、日本は国家としていかなる政治的交流をもったのか。諸国の情勢、歴史認識、国防などから、友好と対立に揺れた平安時代の外交を明らかにする。使節が来日するたびに、審議を重ねて対応を協議した公卿たちが従った法と規範や、国際感覚を読み解き、新たな歴史像を描く。
内容説明
諸国の勃興と衰退がめまぐるしい東アジア情勢において、消極的政治外交をとった日本。対外的な軍備を欠くなか、公卿たちはいかなる審議を重ね、外国への対応を協議したか。彼らが従った法と規範、国際感覚を読み解く。
目次
平安時代の歴史像と対外世界―プロローグ
刀伊の入寇と王朝貴族(刀伊の入寇からみた外交関係;東北アジア情成からみた刀伊の入寇 ほか)
朝鮮半島と平安時代の日本(九世紀の日本と朝鮮半島;十世紀の半島情勢と「積極的孤立主義」 ほか)
五代十国から宋の中国統一と日本(呉越との交流;宋初の中国と日本 ほか)
王朝貴族の自己意識と対外観(高麗医師派遣要請問題;日本の返牒と対外観 ほか)
後白河法皇と平清盛の外交(南宋の成立と日本;後白河・清盛の日宋交渉の舞台裏)
王朝貴族の外交のゆくえ―エピローグ
著者等紹介
渡邊誠[ワタナベマコト]
1977年、岡山県に生まれる。現在、広島大学大学院人間社会科学研究科准教授、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
107
憲法9条に規定された戦争と武力行使の放棄は、平安朝後期の摂関期・院政期に事実上実現されていた。反戦平和主義や現実外交の結果ではなく、積極的孤立主義による国際政治からの離脱を選んだが故に。日本は飛鳥時代からは中国や朝鮮の様々な王朝と交渉を重ねてきたが、藤原氏支配が安定した朝廷は唐の衰退で戦乱期に陥った大陸情勢に巻き込まれるのを忌避し、海という障壁に守られた立ち位置で面倒な外交を放棄したのだ。遠いウクライナの戦争が内政にも影響し、隣国がミサイルで威嚇する今日に比べ、平和ボケが許された幸福な時代だったといえる。2023/09/03
さとうしん
14
894年から蒙古襲来までの王朝を中心とする外交を概観。半島諸国との外交が神功皇后による三韓征伐伝説を基調としたこと、白村江の戦い以後、対外的な武力を持たなくなった朝廷が「積極的孤立主義」を志向したことなど、注目すべき論点が多い。清盛の日宋貿易についても従来とは異なる評価が提示されている。そして蒙古襲来に際して日本がなぜあのような対応を取ったのかも、外交についての歴史的な展開を辿ると「さもありなん」と思えてくる。対外的な武力を持たなくなった政権の外交という点に着目すると、現代でも学びがありそうである。2023/10/12
hyena_no_papa
5
遣唐使の停止、唐の滅亡後の日中外交は停頓していたかのように学校で教わった記憶があるが、どうも違うのではないか?という気がして、いろいろ調べて行き当たった一つが本書。前半から期待を裏切らない。勿論史学の専門家によるものだから様々な史料などが登場してきて、内容的には易しいとは言えない。それでも、エピローグの「王朝貴族の外交のゆくえ」が平明にして秀逸。教科書では外交の乏しい時代として記述されるが、実際は東亜諸国の躍動を反映して人々の往来も盛んなることを分かりやすく説く。p190の「恥」についての記述には頷く。2023/09/17
お抹茶
4
後知恵ではなく,史料を基にすれば当時の問題意識は行動規範はこうだった,というように説明していくので,昔の公卿の苦労やうろたえぶりが伝わってくる。登場する主な外国は高麗や宋であり,国際政治から遊離していた日本では外国の思惑や事情を掴めず,慎重に「思い込み」の判断を下していった。外交を巡る貴族政治には肯定的な評価をしていて,自己の利害を優先した恣意的な政治ではなく,貴族層が共有する法と規範の秩序に基づいたものであり,天皇と摂関もその基盤の上で政権を運営していたと述べている。2023/05/15
Teo
2
それまで遣隋使や遣唐使を中国に送っていたり、さらに前は朝鮮半島での勢力確保をしたりしていた日本が平安時代に入るとすっかり外国との関わりに消極的になって行く。特に新羅とはこれまでの経緯からかなり警戒心を持っていた。そんな所に刀伊が入寇したりして外からの刺激がある時は嫌々ながら対処せざるを得なかった。武力対抗の場合は仕方ないが一方で使者が来ると前例などに基づいてもめる。しかもメンツを気にした方針を立てたり。それはある意味、弱肉強食の世界では弱味を見せられないと言う意味でもあったろう。 2023/07/03
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