出版社内容情報
江戸城の本丸奥にあり、将軍の家族が暮らしていた後宮=大奥。愛憎と陰謀渦巻く男子禁制の世界のイメージが根強いが、実態はどうだったのか。江戸時代を通して十四度発令された大奥法度(奥方法度・女中法度)を読み解き、その歴史・職制・機能を分析。多くの男たちが出入りしていた事実を明らかにし、「女たちの大奥」という固定観念を問い直す。
内容説明
江戸城本丸奥にあり、将軍の家族が暮らした後宮=大奥。その実態を知る上で不可欠な大奥法度から歴史・職制・機能を分析。多くの男たちが出入りしていた事実を明らかにし、「女たちの大奥」という固定観念を問い直す。
目次
女たちの大奥に出入りする男たち―プロローグ
江戸城大奥の成立(江戸城を構成する人びと―表向と奥向;成立期の大奥;二代将軍秀忠と大奥;大奥に出入りする人びと)
江戸城大奥の従属化(三代将軍家光と大奥;四代将軍家綱と大奥;老中による大奥支配)
江戸城大奥役人の制度化(五代将軍綱吉と大奥;相次ぐ女中法度の整備;八代将軍吉宗と大奥;近世後期の大奥)
江戸城大奥のゆくえ―エピローグ
著者等紹介
福田千鶴[フクダチズル]
1961年、福岡県に生まれる。1993年、九州大学大学院文学研究科博士課程後期中途退学。1997年、九州大学博士(文学)取得。国文学研究資料館・史料館助手、東京都立大学助教授、九州産業大学教授等を経て、九州大学基幹教育院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
12
江戸城の大奥を解説した一冊。何度も改訂された「大奥法度」を丁寧に読み解いていくことで、大奥という制度の変遷を見ている。「男人禁制」というイメージに反し、下人や警備などで男性の出入りが多かったこと。また「表向」の老中による統制が時代を経るごとに強化されていったことを実証する。個人的には大奥の意義として、男性の暴力からのアジール的な側面を強調しているのが興味深かった。事実大奥に走り込んでくる女性もいたわけで、著者の言うように老中支配の進展も、アジール機能の衰退という近世史の流れで捉えられるのかもしれない。2021/11/14
アメヲトコ
10
21年7月刊。テレビドラマなどの影響で、女性だけの世界というイメージの強い江戸城大奥について、大奥法度を丁寧に読み解いていくことでその実像を明らかにしようとした一冊です。法度の整備にしたがって老中や留守居年寄による統制が強まっていったこと、また日常的にも男性の役人が内部に出入りしさまざまな役目に従事していたことなど、まさに「女と男の大奥」であったことが明らかにされ、従来のイメージが大きく変わります。巻末掲載の、大奥に視点を置いた幕府の職制図も興味深いところ。2021/08/30
Toska
9
同時代史料にこだわる硬派な大奥論。お役所的な法度の条項が延々と並び、正直かなり読むのに骨が折れる。あるいは、そうした「つまらなさ」こそが巨大な官僚機構たる大奥の本質なのかもしれない。一方、大奥に男性原理を排したアジール的な性格を見、これに対する老中からの管理圧力を論じた結論部は非常に面白かった。男性が大奥に入る時は帯刀しないのが基本だったんですね。この部分をもっと膨らませてもよかったのでは。2023/02/21
伊達者
1
大奥のルールを分析・紹介した本。大奥の支配に老中を筆頭に男性が深く関与するに至ったことが説明される。出入りの仕組みやルールが分かってなかなか面白かった。さらに驚いたのは著者があとがきで突然ベールを脱いで現代に残る奥さま、ご主人を厳しく糾弾するところ。奥に関する研究の動機が最後に分かりここが最も面白かった。奥さんと大奥は結び付かなかったので新鮮。ところで奥さん以外の呼び方というのは難しい。〇〇さんの妻ですか。と電話セールスが話すのはちょっとなあ。2022/12/27
Pyonkichi
1
大奥法度を読み解くことで、大奥の実態と歴史的な変遷を展望した本。法度の読み解きが中心なのでやや単調ではあるが、当初は女たちのアジールだった大奥が、時とともに男を中心とする幕府の秩序に組み込まれ、むしろ女たちを閉じ込める籠のように認識されるようになったという著者の展望は興味深い。2022/05/29