出版社内容情報
抜歯やイレズミ、笑いの誇張表現、装身具などを分析し、顔への意識の変化と社会的背景を解明。そこに込められたメッセージをさぐる。
内容説明
土偶・仮面・埴輪・土器など、“顔”を意匠とする造形品には、古代人のいかなるメッセージが込められていたのか。抜歯やイレズミ、笑いの誇張表現、装身具などを分析。顔への意識の変化と社会的背景を明らかにする。
目次
歌に詠まれた纒向仮面―プロローグ
日本最古の妖怪画
方相氏と「鬼は外」の起源
黥面考―顔のイレズミの歴史
縄文土偶の顔
弥生時代の顔の表現
異形の精神史―エピローグ
著者等紹介
設楽博己[シタラヒロミ]
1956年、群馬県に生まれる。1976年、静岡大学人文学部卒業。1986年、筑波大学大学院歴史人類学研究科博士課程単位取得退学。国立歴史民俗博物館考古研究部助手・助教授、駒澤大学文学部助教授・教授を経て、東京大学大学院人文社会系研究科教授、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
びっぐすとん
18
図書館本。新聞書評見て。平安時代の遺跡から出土した一つ目の怪物(鬼)の描かれた墨書土器から日本の鬼のイメージの変遷、方相氏との関係、どれくらい過去まで方相氏と関係があるのかという話から弥生の黥面土器、魏志倭人伝のイレズミ記述から縄文土偶の黥面へと時代を移っていくが、方相氏の日本での起源と弥生、縄文のイレズミは違う問題なので、1冊のなかで書かれていると分かりにくかったが、どちらももう少し詳しく知りたい内容だった。今度から土偶を見るときはイレズミがあるか注目してみよう。抜歯やイレズミ、通過儀礼がハード過ぎる。2021/04/24
月をみるもの
16
小林達雄によれば、道具は第一の道具=「土器やヤジリなど生きていくために最低限必要なもの」と、第二の道具=「土偶のように別になくても生存そのものは脅かされないもの」に分類される。第二の道具がなぜ生まれてどう使われたのか究極的には誰にもわからない。けれど、本書と最近話題になった「土偶を読む」( https://bookmeter.com/books/17831041 ) を比較すれば、「学問がなにを目指しているのか」は、誰にでも(とは言わないけど多くの人に)わかるのではないか、、という気がする。2021/07/04
hal
13
顔面の入れ墨や「異形」の歴史について、主に縄文から弥生時代あたりを中心に考察し纏めている。縄文人はまるで『鬼滅の刃』の鬼のような模様に顔に入れ墨して、耳には最大で10センチぐらいにもなるような土器のピアスを嵌め込み、女性は髪を結い上げ櫛を刺していたとか、文明人から見たらまさに「野蛮人」だと思うが、地位の上下もある完全な平等社会ではないようだが、あまり争いのない穏やかな社会だったらしい。その証拠にアッシリアや秦の始皇帝の兵馬俑の写実性に比べたらまるで子供の作品のような…と言われて、納得してしまいました。2021/01/28
ぽけっとももんが
8
図書室新着本。顔といっても写真はないのだから検証するのは主に土偶である。顔にイレズミ(刺青と入墨は違うらしいしそれを土偶や絵から読み取ることはできないからカタカナ表記)を施した土偶から職業や身分が推察される。手に取った時に想像した以上に本格的で理解したとは言い難いけれども、古代の人たちが作った土偶などの「顔」を眺めるだけでも楽しかった。これらの顔は作者にとって会心の出来だったのか不本意ながらの出来だったのか。どっちかな、案外自信作だったのかもしれない。2021/04/16
Yuki2018
6
古代日本の習俗を、埴輪・土偶等の「顔」を軸に、考古学的に論証。縄文人はイレズミをしていたが、これは痛みを伴う通過儀礼だった。弥生に入ると中国の影響からイレズミは周辺民族や部の民など被支配者を表すように。更に面白いのは異形を象徴する「鬼」の下り。鬼を退治する「方相氏」が漢から伝わったが、いつしか方相氏が鬼のイメージに転じたという。今も季節の変わり目(節分)には追儺の儀式が行われ、大柄な男性が方相氏を演じ、穀物を投げ、鬼を踏みつけるポーズをとる。これが力士の四股や歌舞伎の見得の起源だとも。とても面白くお勧め。2021/03/23