出版社内容情報
国際連盟脱退や日独伊三国同盟締結など、日米開戦への原因をつくった外交官として、厳しく評価されている松岡洋右。しかし、現実の彼は日米戦争回避を図って行動していた。先見の明と己の才覚を武器に外相までのぼりつめた実力者が、なぜ意に反して日本を破滅的な戦争へ導いてしまったのか。複雑な内外の政治への対応を繙き、人物像を再評価する。
内容説明
日米開戦の原因をつくった外交官として、厳しく評価されている松岡洋右。しかし、現実の彼は日米戦争回避を図って行動していた。その狙いはなぜ破綻してしまったのか。複雑な内外の政治状況を繙き、人物像を再評価。
目次
松岡洋右という人物―外交官・満鉄・代議士
現状打破で行き詰まった日本
「自主外交」から南進政策へ
日独伊三国同盟
破綻した南進政策
破綻した日米関係
著者等紹介
服部聡[ハットリサトシ]
1968年、群馬県に生まれる。1993年、新潟大学法学部卒業。1999年、神戸大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、大阪大学外国語学部非常勤講師、博士(政治学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kawa
30
日独伊三国軍事同盟や日ソ中立条約締結の立役者でA級戦犯として死刑判決(執行前に病死)を受けた外交官・松岡洋右。その経歴から太平洋戦争開戦の原因を作ったヒールとしてのイメージが強かったのだが、実際は日米開戦を回避するために、軍部の東南アジアへの南進論に立ちはだかったのだと言う。知らざれる歴史の事実や、日本人離れした弁舌力で大衆的人気は高かったが、その外交的手練からか昭和天皇には嫌われていたなど興味深い記述が多数。小説の主人公としても魅力的な人物、そんな松岡を見てみたいものだ。2020/06/11
MUNEKAZ
13
松岡洋右を再評価した一冊。国民的な人気を背景に、軍部の進める南進論に対抗し、外交的な決着を図る姿を描きだす。タイ仏印間の仲介など実際に松岡の交渉で武力行使が防がれた例も挙げられており、彼を三国同盟を結んで戦争へと突き進んだ外相とする単純な見方が改められる部分もある。支離滅裂に思える言動も、分権的な戦前の政治体制の中では致し方ない立ち回りなのかも。しかし、自身の経験に基づく不信感からアメリカとの信頼醸成を軽視した点は、やはり批判されるべき。国内でもそうだが自身の能力に頼んで、味方作りをしなさすぎでは。2021/12/16
アメヲトコ
7
国際連盟脱退や日独伊三国同盟締結など、日本を破滅に追いやった男として悪名高い松岡洋右について、その外交の実像を丁寧に再検討した一冊。若いころの在米生活で培われた高い語学力と弁論力、そして世界の現実と将来像を冷徹にとらえられる目を持ちながらも、その能力を恃むがゆえにしばしば大事な場面での意思疎通を欠き、ポピュリストとして行動せざるを得なかったところが躓きといえるでしょうか。読んでいるといろいろな歴史のイフを感じずにはいられません。2021/05/02
ジュンジュン
7
外相時代(第二次近衛内閣)が記述の中心。日独伊三国同盟、日ソ中立条約、タイ仏印紛争調停(初めて知った)…表舞台での活躍が詳しい。反面、外相就任以前の言及は乏しく、ほぼ教科書的な近代史のおさらいに終始し退屈だった。あとがきで、学術書「松岡外交」を一般向けにアレンジしたものだと知り納得。2020/05/09
バルジ
5
『松岡外交』を一般向けに再構成し「大衆政治家」としての松岡洋右の姿を描き出す一冊。残念ながら「大衆政治家」としての松岡像には踏み込みきれてないが、外務大臣としての変転極まる外交戦略を一般書の形で読める事自体価値がある。本書を読むと非凡な才能で対外交渉を纏め上げる力量に脱帽する他無い。一人で陸海軍と交渉しつつ相手国との外交交渉を成功させる離れ業が出来る政治家はこの時代、松岡しかいなかったであろう。しかし外交における「信頼関係」が米国との間で最後まで築けなかったのは外政家としての松岡の限界でもあろう。2020/02/24