内容説明
日本人の「姓」と「苗字」のルーツはどこにあるのか?明治以前の日本男性は、なぜ人生の節目ごとに改名したのか?人名が持つ意味や役割を古代から現代までたどり、「日本」「日本人」とは何かを考える。
目次
姓と苗字(中国の「姓」制度の成立と東アジアへの伝播;日本における「姓」制度の継受と展開;「家」の成立と「名字(苗字)」の発生
苗字の由来
苗字の展開と姓)
前近代の名前(名前の変遷;ライフサイクルと名前)
近世の名前と国家・社会・民族(名前の管理と規制;社会集団・社会関係と名前;名前をめぐる民族と国家)
近代の「氏名」と「帝国」日本(近代的「氏名」の創出と「国民」編成;他民族の「日本国民」への編入と「氏名」)
氏と名前のゆくえ―エピローグ
著者等紹介
大藤修[オオトウオサム]
1948年、山口県に生まれる。1971年、茨城大学人文学部文学科卒業。1975年、東北大学大学院文学研究科博士課程中退、国文学研究資料館史料館助手、同助教授を経て、東北大学大学院文学研究科教授。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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びっぐすとん
16
図書館本。奈良時代の人名に興味が出て借りてみたのだが、上代の名前についてはあまり載っていなかった。一生同じ名前を使う現在から見ると、氏、姓、名字の区別、使い方も難しいし、幼名、実名、仮名も分かりづらい。節目ごとに改名するとか、大袈裟な割に今より名前がアイデンティティと結び付かないな。女子に至っては皇族ですら実名がなく、通称だけって時代があったことに衝撃。頻繁に変えるのも実名が無いのも名前が記号ってことの裏表なのかな。名前の実例をもっと紹介して欲しかった。アイヌの名前の歴史が興味深い。意味も知りたかった。2019/11/30
アメヲトコ
3
名をめぐる総合的な本。民俗学・人類学から家族論・社会史・ジェンダー論・植民地論まで非常に射程の広い議論が展開されており考えさせられます。アイヌは無文字社会にもかかわらず人名の重複を避けるための情報共有が非常に広範囲になされていたという話が非常に面白い。2014/02/21
Jiemon
2
昔の童名「・・丸」は麻呂が変形したと言う説、便器の「おまる」に由来した辟邪(へきじゃ)名であったとする説がある。不浄の名を付ければ悪魔も嫌がって近寄らないので魔除けになるという俗信があった。そして「・・丸」のまま大人になる人達もいた。理由は様々であるが下層民がそのまま成人するケース。童が神に近い存在であると考えられていたため一般平民とは異なる力を持ち、神仏のごとき呪的な力を持つことが望まれたからというケースもあったようだ。2013/11/10
だちょう
1
日本人の姓、苗字、名前について、古代中国における姓・氏の起源から近世~現代の他民族の同化政策に至るまで、幅広く概略が語られていて勉強になった。特に女性の名前の変遷と、中世後期以降家社会が強くなり、女性が行政から締め出されていくさまがリンクしていくのが興味深い。姓、苗字というのは家父長制と強くリンクしているんだなと思った。2023/12/31
Kenji Suzuya
1
古代から現代まで幅広く対象として、姓・苗字・氏や忌み名・幼名・諡号など名前のあり方の変遷を扱う。庶民については、相続のあり方や「家」のあり方、また地域差によりまちまちであったものが、明治期に管理の都合上統一されたことが示される。夫婦同姓・夫婦別姓や、アイヌ・琉球、旧植民地の扱いなど、現代的な問題につながる論点も広く扱われている。2015/12/22