内容説明
かつて日本人の意識に密着していた本家と分家の関係。江戸の武家社会では「家」の存続のため、より重要な意味があった。佐賀藩鍋島家など全国の諸大名の事から、上下関係だけではわかりきれない複雑なお家事情を描く。
目次
大名家の本分家関係―プロローグ
全国の大名家における本家と分家(部屋住から分家へ;領地朱印状の拝領をめぐって)
分家をつくる(分家創出の契機;家紋が語るもの;多様な本分家関係)
「同族」関係の維持(将軍綱吉と本分家関係;一族としてのまとまり)
新しい本分家関係―エピローグ
著者等紹介
野口朋隆[ノグチトモタカ]
1971年、埼玉県に生まれる。2006年、九州大学大学院比較社会文化学府博士後期課程修了、博士(比較社会文化)。現在、福岡大学人文学部非常勤講師・佐賀大学大学院経済学研究科非常勤博士研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
116
今も親戚付き合いは面倒なものだが、お家の相続が絡む江戸時代はもっと面倒だったろう。将軍家をはじめ大名の相続争いが絶えなかった室町時代の経験から、幕府は本家分家の別を設けて一応の秩序を与えた。それでも分家の立場や力は各藩で異なり、完全に支配される場合もあれば対等関係を主張する家もあった。現代人からすれば馬鹿らしいとしか思えないが、当時の武士にとっては深刻な問題なのがわかる。お家騒動が時代小説の格好のネタなのも、江戸期を通じて形成された本家意識が庶民にまで残ればこそか。日本人は徳川がつくったものだと思い知る。2023/05/25
MUNEKAZ
14
江戸時代の大名の本家と分家、所謂本藩と支藩の関係を紹介した一冊。本家が分家を従えるといったような一方的なものではなく、各家の来歴によりその在り方は様々。ただ常に改易の危機が考えられるだけに、分家を起こすということは、リスクを分散させるために一定のメリットがあったのであろう。また幕府の側も、本家と分家の争いに介入する際には、血統の維持と安定を重視しており、前代の室町幕府とは違う抑制的な姿勢を感じる。大きな騒乱なく、本家・分家のシステムが運用されていたことに、武家政権の成熟が見られるのである。2022/11/19
伊達者
2
図書館本。2023/01/18
鈴木貴博
1
仙台伊達家と宇和島伊達家、長州藩と長府、徳山、清末各藩・岩国領の関係等前々から気になっていたので読む。個々の本家分家の事例が網羅的に書かれているわけではないが、本家分家関係の典型的なパターンとその具体的な実例が紹介されており、知らなかったことも多く面白く読んだ。2018/09/15
空木モズ
1
いわゆる幕藩体制での大名の本家と分家、分家の性質と役割などについての本。著者の関係か佐賀の鍋島氏を取り扱う事が多い。この本の内容で私が一番興味を持ったのは、近世ではなく中世に分家になって完璧に別の家扱いなのに、金銭などの援助を期待して分家として扱って貰おうとしている例だった。2016/09/17