内容説明
碁盤目状の町割りの平城京や平安京は、中国の長安城をモデルに作られた。また高句麗や渤海の都も同様に影響を受け、どの国でも個性あふれる改変を加えた。都の姿から中国の統治思想の受容を探る、東アジア文化論。
目次
都をつくる―プロローグ
中華帝国の都(理想の都;前漢の長安と後漢の洛陽;太極殿の誕生;南北朝の都;隋唐長安城の登場)
日本の都(藤原京への道;平城京遷都;難波宮の先進性;長岡京と平安京)
朝鮮三国の都(高句麗の都―南進する都;百済の都;新羅の都―千年の都)
海東の盛国渤海の都(渤海の建国;五つの京)
それぞれの都―エピローグ
著者等紹介
吉田歓[ヨシダカン]
1965年、横浜市に生まれる。1998年、東北大学大学院文学研究科博士課程修了、博士(文学)。現在、山形県立米沢女子短期大学日本史学科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Toska
16
「平安京/平城京は長安をモデルに造られた」という教科書的な理解を何十倍も深めてくれる好著。長安は文字通り一夜にしてならずで、『周礼』の理想都市が淵源と言われながらも、様々な王朝の試行錯誤を経てあのような型が出来上がった。日本とてこれを単に丸呑みにしたわけではなく、平安京に至るまでには様々な都でのアップデートを経ていた。さらに、比較の対象として同じ中華圏の高句麗や百済、新羅、渤海の都も紹介してくれる至れり尽くせりな内容。2024/10/01
chang_ume
12
古代東アジアの各王都について王宮部分の構造分析を主とした内容。中国王都に関しては鄴(曹魏)と長安(隋唐)を二大画期と位置付けながら、『礼記』由来の三朝制を軸として、建物・空間の配列から王宮構造の分析がなされる。古代日本に関しては前期難波宮と長安の構造比較が興味深く、中華皇帝と日本天皇の公私領域の空間認識の差が明らかになったように思える。また朝鮮三国・渤海・日本の各都と本場長安のあいだの異同を分析することで、中華帝国の王都構造を各国がいかに受容したか、その取捨選択のあり方に関する解釈も興味深かった。2022/08/07
叔嗣(しゅくし)
2
宮殿の三朝制や太極殿の東堂や西堂が付随する造りなど都城の理解が深まった。2019/06/09
陽香
2
201102012016/12/05
wang
1
古代東アジアの都城の比較。周秦以来の中国各朝の宮城あるいは首都の形式がどのように発展して来たのかを形式からその思想や背景を推論。周礼、三朝、大極殿への発展など。日本に転じれば長安城を模倣したと言われながら、細部の形式を見れば単純なコピーではなく、それぞれの京毎に形式も変わっている。何を影響受けたのか何故なのかを考えると面白い。時間的空間的に縦横に列挙することで大局が見えるような気がする。もっと詳しく知りたい。1テーマから歴史を感じられる良書。2011/09/10