内容説明
慢性的な飢餓に直面し、生と死の狭間で生きていた室町人。そこに巨大飢饉が襲いかかったとき、人びとはどうしたのか。現代にも通じる飢餓と飽食の残酷な構造をえぐりだし、室町時代の実相を描く。中世社会の雑学も満載。
目次
いま、飢饉を考える―プロローグ
謎の異国船襲来
室町人の“死”と“生”
なぜ巨大飢饉は起きたのか?
足利義持の「徳政」
荘園と町の飢饉習俗
難民は首都をめざす
大飢饉のあとに―エピローグ
著者等紹介
清水克行[シミズカツユキ]
1971年、東京都に生まれる。1994年、立教大学文学部卒業。2002年、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、明治大学商学部専任講師・博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ひこうき雲
74
良書。室町時代の様々、知らなかった情報に溢れていた─(あくまでも著者の仮説だが)中世、古米の方が膨れて量が多くなり、おなかがいっぱいになるため、新米に比して高値であった。飢えた人々は富が集積されている京都を目指し、持たざるものは、「有徳人」、すなわち持てるものに「徳」つまり施しを、時には暴力的に求めた。それはのちの徳政令に繋がっていく。2021/07/25
こばまり
57
習俗、天候、外交、宗教観とさまざな角度から応永の大飢饉を検証。描かれる為政者と庶民の姿に、過去の出来事が俄かに息づく思いがする。成る程この分かりやすさと面白さは著者のかつての教え子、高校生を意識してかとあとがきを読んで納得する。2019/10/29
さつき
36
室町時代の応永の大飢饉について当時の人々の生活に寄り添って書かれています。室町時代については何も知らないので読んでいて驚くことばかり。特に印象的だったのは、中世の男女の人口比は女性の方が圧倒的に多いと当時の人々は信じ外国人の記した書物にもそう書かれていること。京上夫などの夫役の一部で実際の奉仕でなく夫銭を納めることが行われていたこと。盆踊りをはじめとしたお祭りの中には応永の大飢饉がきっかけで始められたものがあること。全く知識がなく読んでもわかりやすく読みやすかったです。2016/08/27
Toska
33
室町時代の経済が高度に発達していたことは、今ではよく知られるようになってきている。「にも拘らず」ではなく、「それ故にこそ」飢饉が起きたのではないか、というのが本書の感想。室町幕府の最盛期たる応永年間に大飢饉が発生した事実は重い。守護権力の安定が、却って容赦ない収奪を可能にする皮肉。流通の整備と貨幣経済の浸透は、首都・京都への物資の集中をもたらした。まず地方が飢え、難民の流入により都も飢餓に包まれる蟻地獄。天候の不順があったにせよ、飢饉は構造的に引き起こされたと言える。2025/05/02
ぽんすけ
27
飢饉と言われてピンとくる日本人はどれくらいいるのだろうか。私が高校生の頃に冷夏で東北地方で米が減収となり、スーパーにタイ米が並んだことを覚えているが、それでも餓死とかになるはずもなく中世近世日本を度々襲った大飢饉の状況がどれほど凄まじいものだったかは、こういった歴史関係の本から推察するしかない。そうすると大飢饉というものは確かに天候不順が根本的な原因であるものの、それに付随して政治的要因も馬鹿にならないということがよくわかる。当時すでに経済システムとして全国の荘園で代銭納が一般化し、それまで貢納されていた2025/04/17